【七つの大罪】黄昏の歌姫.2

74.従う ページ29

目の前に聖騎士と、その周りに数人の兵士達。今ここに頼れるメリオダスやキングはいない。ここにエリザベスと残ったのは間違いだったのだろうか。……うんん。私達は町の人達に顔を知られてる。
どっちにしろ捕まるのは時間の問題だったのかもしれない。
けどこんな所であっさり捕まるの？そんなのごめんだ。
……こんな時、あの時みたく魔法を使うことが出来たら…。


「何を考えているかは分からんが、無駄な足掻きをするならよしておくんだな。怪我をするだけだ」

「それより、エリザベスを離して！！その子を誰だと思ってるの…！その子は、王国の大切な王女でしょう！？」


王女様であるエリザベスに対して、あまりにも乱暴な行いに次第に声が大きくなる。
なんで聖騎士ってこんな人達ばっかりなの。乱暴で、力ずくで、人の話なんて聞きやしない。



「勘違いしているようだから言っておくが、このグリアモールが忠誠を誓ったのは王家ではなく──」

「やめな！！私の妹に乱暴したら承知しないよ！！」


背後から聞こえたその声に振り返ると、そこには紫色をしたショートヘアーの女の人が立っていた。
背中に剣を背負い、凛とした表情でそこに立つ姿はまさに戦う女性そのもののように感じた。
この人、もしかして。エリザベスの…。


「う…そ……ベロニカ姉様！！」


や、やっぱりそうだ…！あの人がエリザベスのお姉さんだ。そうか、ここで彼女が現れたんだ。
ベロニカの命令により、エリザベスはようやくグリアモールから解放される。
私はすぐさまエリザベスの元へ駆け寄ろうとたけど、ベロニカに腕を強く掴まれ阻止された。


「な、にするんですか…！離してください…！」

「離したら、あんたはあの子と逃げようとするでしょ。無駄な抵抗だけど、こっちもそんなに時間を取りたくないんだ」


掴まれた腕を振りほどこうとしても、彼女の力は強くてそれがかなわない。同じ女でもここまで力の差が違うなんて…。
聖騎士と、王女であるベロニカを前にしてしまったらもう私がどうこう出来るような話じゃない。


「あんた、Aだったっけ」

「…はい」

「私はエリーさえ見つけられればそれで良かったけど、あんたも立派なお尋ね者。あんたを探してる奴がいるんでね。大人しく着いてきてもらうよ」


私はもう抵抗する気は無かった。だけど、引っかかるのは私を探してる奴がいる、と言った今のベロニカの言葉だった。

75.銀髪の青年→←73.対峙

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す