箸が転べば僕らは笑った -5-【魔d!】 (ページ5)

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煩くアラートのように鳴り続ける胸を抑える、ぐにゃぐにゃと視界の端が歪んでいくのは、感情についていかない魔力が暴走して、認識阻害が発動しているからだろうか。

彼女と話したい。けれど、この状況からは逃げたい。

相反した気持ちを胸に、彼女から一歩下がろうとしてつまづいて転びそうになった僕を、彼女らしき悪魔(ひと)は咄嗟に腰に手を回して抱えた。

『待って、話を聞いてください』

対面から抱きしめられるような姿勢で、耳元でそう呟かれる。
全身に一気血が巡る感覚に襲われながら、なす術もなく僕が数度頷くと、彼女らしき人はホッとしたようにそのままの姿勢で話を続ける。

『【プロフェート・ノヴァ】は、確かに私の"役目"です。何も知らないソイ様は何も間違っていないのです』

Puruson「役目って…？」

『あれは本名じゃないんです。僕にもちゃんと両親につけていただいた大切な名前があります』

キラキラと輝く髪は何度見ても"黄金"で、礼をする時に隠そうとする角も天を目指さずくるりと巻いている。
でも、けれど、認めざるを得ない

『改めまして、【ツェーゲルン・A】と申します』

目の前にいる悪魔こそ、待ち続けた彼女なのだと

『あと…あの、えっと…そもそも、僕は"男"なんで、ほんとは男同士で結婚できないみたいです』

Puruson「えっ」

胸に手を当てて「ごめんなさい」とはっきりと答える彼女…否、彼を前にして、新情報を投げつけられた僕の頭は爆発寸前

Puruson「えっ、おと…？？？」

『つまり…あー、ソイ様はうちのおば…プロフェート家当主とプルソン家当主様に騙されてて…あの、僕も同じ被害者なんです』

コロコロと変わる表情にわたわたと身振り手振りで必死に伝えようとするその姿がなんだかおかしくて、吹き出してしまうと「よかった、やっと笑顔が見れました」と綻ばれてしまった。

この後は彼が僕と会えなかった期間のことを話したのだけれど…この話は今回は割愛しよう。

ポッカリあいた3年間に彼女にどんなストーリーがあったのかとか。姿とか髪色とツノの話とか。
知らないままでいてくれた方が、僕とAだけの秘密があればあるほど、僕は嬉しいからね。

Puruson「…なるほどね」

『はい…というか、ソイ様ってそんなにおしゃべりだったんですね』

Puruson「ノヴァ様…いや、Aだってそんなに適当なとこあって馬鹿みたいに一直線なところがあるなんて知らなかったですし」