箸が転べば僕らは笑った -5-【魔d!】 (ページ38)

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40.楽しんで【Baramu】ページ38

【バラム・シチロウ視点】

Baramu「…もう《感覚共有》の訓練は終わりかな」

そう呟くと目の前に座っていた少年は繋いでいた僕の手を少しだけ強く握りながら椅子を揺らした

『ほんとですか…！！』

Baramu「うん、それにしても凄い成長率だねぇ」

『それはバラム先生のおかげです、ありがとうございます！』

輝かしい笑顔で「やった！」と小さく胸元でガッツポーズをとる彼を見る

学生って、若いっていいなぁ…と想うようになってしまったのは、僕もそれなりのオッサンになりつつあるからなのかなぁとも思ったり

Baramu「師団も入ったんだよね？」

『はい、魔具研究師団に』

Baramu「…それ、例の幼馴染君たちに合わせてたりする？」

『一応自分で選んだんですけど…バラム先生も合ってないって思います？』

Baramu「いやぁ…」

『合ってないと…思われているんですね…』

歯切れ悪く答える僕に対してあからさまに落ち込んだ様子を見せる彼に、微笑みながら言葉を続ける

Baramu「だって、A君いっつも「魔具だけはちょっと…」って項垂れてるから」

『その通りなんですけど～！』

初めて会った時からすれば、随分と気を許してくれているのは身に染みてわかるけど
それは彼のアドバンテージになることを僕が補助しているからにすぎなくて
学生時代に会えていたならもっと仲良くなれてたんじゃないかな、なんて最近は思ってしまうけど

…やっぱり年取っちゃったのかなぁ

Baramu「A君は魔術開発とか魔術格闘とか、いっそ筋肉格闘とかも…あ、アスレチックとかも向いてそうだよね」

『僕もそう思います…アスレチックはすごく楽しかったです…』

Baramu「ちゃんと他の師団も体験して回ったんだね」

こんな感じで楽しかったんですよ
と身振り手振りで大きく体を使って説明を始める彼に「よかったね」と伝える
するとにんまりと口角を上げて元気よく「はい！」と返事をしてくれるのだ

生徒に懐かれる…って言えば聞こえは悪いかもしれないけど、なんだか初めてでこそばゆいな

でも、僕が聴きたかったのはいかに師団見学が楽しかったかじゃなくて、なんで魔具研を選んだか

Baramu「何か【見えた】の？」

そう訊ねると、先ほどまでの楽しそうで大袈裟な反応をすることなく、彼はあくまでも自然に微笑んだ

『…そうですね、芳しくない未来が少し』