箸が転べば僕らは笑った -5-【魔d!】 (ページ37)

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ra「ガハハ！ぽれの勝ちぃ～！」

ラッダァ先生は満面の笑みでゴールラインで僕たちを待っていた

ぶいぶい、とピースサインを作りながら喜びを表す彼に対してロボロ君は「なんや腹立つ顔やなぁ」と肩を竦めていた

『負けましたが、アスレチック自体は楽しかったです』

rb「せやな、今度はリベンジしたいわ」

ra「お？お？俺への賛辞が足りてないぞ？」

うろうろと僕らの周りを動きながら「やっぱオメェらうちの師団に入る気ねぇか？」と聞いてくれるあたり、僕らはわりといい動きをしたんだろう

それはなんだか、少し嬉しい

ra「そうだ、A」

『え、はい？』

ra「オメ～あのまま勝ててたのに、なんでロボロを助けに行ったんだ？」

『…えっと、なんでって』

ra「さすがに落ちても怪我するくらいだぞ？」

それでよく保健室に連れてかれる部員も多いんだよなぁ、と続けるラッダァ先生を前にして僕の体はピタリ止まる

それは、確か体が勝手に動いていたからで…って、あれ？

じゃあ、なんで僕の体は勝手に動いたの？

『…勝ち負けよりも、ロボロ君が無事な方が良かった、から？』

ぽつり、と自分の口から漏れた答えにハッとする

つまり、自分のことよりもロボロ君の方を優先したってことなのか

無意識のうちに、咄嗟の判断で、手を伸ばすほどに

『そっか、僕にとって君は大切な悪魔(ひと)なんや』

rb「へっ…？」

僕がシャオロンとウツを思うのとおんなじかはわからないけど

きっとそれに近いくらいに、ロボロ君にも幸せでいてほしいんだ

怪我なんてして欲しくない

五体満足でただただ幸福に

嫌なことから遠ざけて

幸せだけを噛み締めて

「楽しいなぁ」って嬉しそうな笑顔を見ることが僕の幸せ

その為なら僕はどうなってもいい、どうでもいい

彼らの幸せの為に僕が消費されるなら本望だ

『これ！【オトモダチ】だよ！ロボロ君！』

隣にいたロボロ君の手をとって僕はそう叫んだ

彼は少し驚いたように肩を揺らしながらも、柔らかな声でふんわりと笑った

rb「…ふふ、なんやその珍妙な響き」

『えっとな、オトモダチって言うんはな？』

僕の大袈裟に手を振りながらの説明を聞いて、彼は可笑しそうに笑う

初夏に吹き抜く風は、程よい汗の後では心地の良いものだった

ra「なぁんだ、アオハルかよ」

特徴的な笑い声とともに僕らの背中が割と強い力で叩かれ、入団届を目の前に突き出されたのは…また別の話