箸が転べば僕らは笑った -5-【魔d!】 (ページ36)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:22,489 hit

. ページ36

.

『っロボロ君！』

気づけば僕は彼の名を呼び、後ろへ向いて足を踏み出した

足元が崩れる音がして、空気圧に抗いながらも跳躍でロボロ君がいる地点まで辿り着く
あとは手をとるだけだった

しかし、伸ばした手はあと数センチで
ロボロ君の指先を掠めて空を切った

一瞬にして消えた全能感
湧き上がる焦りに揺らぐ視界

【失敗】の2文字が脳を占めて
機能不全直前の僕に、彼は

rb「A、くん…！！」

名前を呼ばれてハッと我に返る
眼前には僕を信じて手を伸ばしてくれる彼がいた

目の奥がチカチカ光って、熱くなって
もう一度、その手を取るべく自分の腕を必死に伸ばした

『とどい、たっ！！』

落下の衝撃に耐えるべく、掴んだ手から彼の頭が地面と衝突しないよう体ごと自分の懐へと抱き寄せる

落下のスピードに合わせて身を捩り、回転の力を利用して岩肌へ蹴りを食らわせるようにして落下威力を殺しつつ壁に沿い安全な着地を狙う

暫くガリガリと異質な音が響いた後、段々と速度は落ちていき、止まった時には暗い岩床に立っていた

…どうやら無事に地面に降りたらしい

と、硬い地面の感触を確かめすぐにロボロ君を見る

『怪我は？』

rb「お、おお、おかげさまで…ないと、思う」

『ほんとに？痛い所は？』

rb「な、い…ですぅ…」

『そう…よかったぁ』

恐る恐るした問いにロボロ君は歯切れ悪く答えたが、痛がる素振りもないみたいなので無事だったのだろう

よかった…ほんとうに、よかった…！

安心を感じたと同時にどかっと疲労の波が押し寄せる

ドキドキと鳴る心臓の音が明瞭に脳占め
はくりとかすかに開いた口からは唾液が漏れた

力が抜けて膝をつくも、抱きしめていたロボロ君の感触が腕の中にあるのを感じ安心して息をつく

しかし、彼がひゅっと息を吸ったのを感じ慌てて彼を地面に下ろした

『ご、めん、勝手なことして』

rb「い、いや！A君が助けてくれんかったら、多分、俺は…」

そう言いかけて一度口をつぐみ、僕の顔を見上げて

rb「ありがとう、Aくん」

はっきりとそう行った後に雑面の下から覗いた口角が緩く上がっていて

合間から小さな八重歯が顔を覗かせていたのが

なんだか

なんだか…？

《ゴ～ル！！》

と、そう遠くない場所で競技用ピストルのシグナルがあがり先生がゴールしたことが知らされた

「行こっか」と彼に笑いかけると、彼は少し固まってから「そうやね」とおかしそうに肩を竦めた