箸が転べば僕らは笑った -5-【魔d!】 (ページ23)

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幸い一年塔の廊下を移動している途中だったから、その場からDクラスまでは走ればすぐに着く
勢いよく扉を開けて、いがるように2人の名前を叫んだ

『シャオロン！！ウツ！！』

sha「なんな…って、え！A？！」

『！無事かシャ……オ！？』

sha「Aがこっち来るん珍しいなぁ」

カチカチ、と指から発せられる威嚇音
プルプルと震えながら空中で足を組むのは尻尾だけでバランスを取っているから
よくわからない形の帽子に変な目のやつ、もさもさの靴にってもう色味がバラバラ系統もバラバラ！

その姿は筆舌に尽くし難く、思わず間抜けた声が出てしまった

『………えっ、と』

sha「ん？」

『ちょっと、そのぉ…タイムで』

両手でTの文字を作り、そそくさと後ろ足で来た道を戻る僕
それを見るシャオロンはクエスチョンマークを頭の上に浮かべていた

どうしよ、なにが起こってるんだ
夢か、これ夢だな、うん、悪い夢

そう言い聞かせながら扉近くまで来た僕はどん、と何かにぶつかった後、両肩を後ろから掴まれて引き寄せられた

zm「ちょ、Aっ最後まで話聞いてぇや」

『ゾム…！』

どうやらそれは追いついてきたゾムだったようで、彼はまだ浅い呼吸で「ちょっとだけ、まって、な」と息を整えていた

『あの…え？シャオ、え？どういう？？？』

zm「そうやばいやろ？…2人"が"」

ゾムは深刻そうにぽつり、と小声で付け足した

…なるほど、僕の早とちりだったらしい

チラッとDクラスを見渡すと、あきらかにクラスメイトも一歩引いた目をちらちらと向けている

『2人がって、じゃあウツもこんな感じ？』

zm「おん、だいぶやばいカッコしとるで」

『…なんか洗脳受けとる？』

zm「そうでもないっぽいねん」

『じゃあ、あれ、自分の意思？』

zm「昨日から徐々に変化してってな」

『…流石に、ちょっと』

zm「そうやろぉ！？！？」

ヒソヒソ、では収まり切らなくなってきたゾムとの話し合い
流石にシャオロンの耳にも届いたようで、彼は眉を潜めてつまらなそうに僕らを見ていた

sha「A？ゾム？なんの話しとん？」

『ご、ごめん…シャオロン、それ、やめてほしい』

sha「……え？」

『頓珍漢なその格好、やめてほしいな』

シン、と静まり返る空間
静寂という言葉が当てはまるような無音

そのなかで目を見開いたまま固まるシャオロンがただジッと僕を見つめていた