箸が転べば僕らは笑った -5-【魔d!】 (ページ19)

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ピリピリとした言い合いを続けている間に、チャイムの音が鳴り響く。
次の授業の予鈴だ、と眉を潜めた時に、手を繋いでいたロボロ君がくいっと僕を手を引いた。

rb「Aくん、予鈴が…」

不安そうな声で、どうしたらいいかと声をかけてくれたロボロ君の方へ目線を逸らせる。
困り顔になっている雑面を見て、湧いたのは罪悪感だった。

『そうやな…ごめん、早く行かんとな』

そう言いながらロボロ君の手を取っていた方を離れないように、けれど押しつぶさないように握りなおす。

空いた手の親指を八重歯にかけて、ビッと横に引いて皮膚を裂く。
空中に描くは大犬座。そして血液を通して魔力を流して呼びかける。

『おいで、ライラプス』

瞬間、4人を包み込むような煙幕があたりに広がっていき、煙がはけていく間に徐々にその姿がハッキリとしていく。

廊下いっぱいに広がる大きな蒼い身体。獲物を探してぎょろぎょろと動く金色の目。その姿は凶悪だとしても魔犬が近いものだろうか。
雲のように流れる柔らかな体毛をたなびかせ、僕の使い魔【ライラプス】は召喚された。

《グルルルル……》

大きく裂けた口元から垂れ流れる低い唸り声ははリードの鼻先を掠め、舌舐めずりをする様に大きな舌をちろりと出す。

Lead「ひっ…で、でっけ…」

『ちゃんと召喚しとるわ、かっこいいやろ？』

そう言う僕の隣で、ライラプスは撫でてくれと言わんばかりに頭を寄せてくる。
フワフワの体毛を撫でながら「もういいよ、ありがと」と伝えれば、使い魔の体は淡く発光しながら小さくなり、先程の20分の一くらいになる。

小型の魔犬サイズになった使い魔は、《ふわぁん！》と満足そうに僕の肩に乗って無邪気に声を上げた。

『じゃあまたな、シャッキー姉さんとご両親によろしく』

そう言ってリードを見ずに、ロボロ君の手を取ったまま、翼を広げて空に浮く。
「行こっか」とロボロ君を見ずにそのまま進む僕の背中に、大きな声が投げかけられた。

Lead「僕はAの性格もさ！嫌いじゃないよ！」

反射的に振り返ると、リードはいつも閉じめる目をかっぴらいて、肩で息をしながらこちらを見ていた。

なら最初っからつっかかるなよ、と呆れつつも僕は大きく息を吸って口を開く。

『うるせー！ばーか！！』

口の端に小指を引っ掛けて「い"ー！」と続ける僕をみたリードが、アホみたいに安心した顔をして笑った。