箸が転べば僕らは笑った -5-【魔d!】 (ページ16)

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行き場を失った男の手は空中でピタリと止まり、《泡》を見上げながら嬉しそうにピュゥと口笛を鳴らした。

『言っとる側から手ェ伸ばすやん、君』

Jazz「ヘェ、さっきのマグレじゃなかったんだぁ」

「同じ一年なのに実践魔法できるとか聞いてね～」なんて、残念そうに降参のポーズを取って手をひらひらと振る。
しかし、その表情は余裕たっぷりではなくなっていた。

rb「ちょ、Aくん！俺は大丈夫！こんなんまた買えるし…」

『ごめんな？守りたいんは僕のワガママやから』

目線は目の前の男から外さずに、ロボロ君の《泡》を強化する。
恐らく相手の家系能力は目標まで干渉を受けないってタイプじゃない、だから今はこうして距離をとっているのが正解だろう。

Jazz「ひゅ～、素敵な彼女さんだねぇ？」

rb「ちゃ！ちが！っつつつ、付き合ってななな！！！」

《泡》の中で暴れているのだろう。ぽよよんという可愛らしい音が後方から聞こえてくる。

そりゃ、こんな僕と付き合ってるなんて誤解されたんや
…嫌だろうな…申し訳なさすぎる

『ロボロ君に失礼や、僕男やし』

Jazz「はぁ！？男！？…えーと、怒ってる、よねぇ…」

どうしようかなぁ、と顎に手を当てながら考え込む目の前の男を睨みつけながら、ジリジリと間合いを図る。
飛んで逃げてもいいけどロボロ君がいるし…認識阻害も薬指に付け替える前に認識されてるから使えない。

本当は普通に倒して行きたいけど、それで教師や生徒会師団に目を付けられたりしたくないし、問題児だと思われたくない。

なによりそれで実家に連絡が行くのが死ぬほど嫌だ

…もう尻尾を巻いて逃げたと思われてもいいから、この場から離れよう。ロボロ君は申し訳ないけど泡の中に入ったまま、風船のように紐を引いて走って窓から飛べば大丈夫だろう。

よしじゃあ行くか、と、ロボロ君が入った《泡》に見えない紐をつけた瞬間だった。

「ジャジー！次は何盗ったのー？」

そんな緊迫感のある空気を、能天気に明るい声が切り裂いた。
シリアスにお花畑が衝突して事故ったみたいな、そんな空気に思わず敵対していた目の前の男とパチクリと目を合わせて声のした方へ向く。

さらさらストレートの金髪に黒のアッシュ
三角形がいくつか並んだような黒い角
横に弧状を描くように閉じられた目
足を組んでジグザグの尻尾で身長をごまかす立ち方

残念なことに、僕は少なからず見覚えがあった。

『げ…リード』