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どうして良いのか分からないといった様子でただ目を泳がせるばかりのフレッドの脇腹を、ワサビが肘で軽く小突いた。
「おい、フレッド。お前も謝れ」
「あー、えっと…ごめんな、ヒロ。
なんて言うか、その、ちょっと調子に乗り過ぎた」
いや、ちょっとどころじゃなかったな、と付け足し、フレッドはゆるゆると小さく首を振ってうなだれた。
そして再び訪れる沈黙。
とうとう耐え兼ねた僕は、少し大げさにため息をつき、ひと呼吸置いてからおもむろに切り出した。
「だからその、つまり…
僕、みんなに対してはそんなに怒ってないんだけど」
「本当なの、ヒロ?」
決まりが悪そうに眉を曇らせて俯いていたハニーが、ようやく顔を上げた。
その表情は先ほどよりも、いくらか和らいだように見える。
「まあ…嘘じゃない」
「ああ、よかった…!からかったりして本当にごめんなさい。大好きよ、ヒロ」
安心したように微笑んだハニーは、腰を浮かせて身を乗り出すと、僕の頬に軽くキスをした。
「なあ、ヒロ。今その写真のカノジョが誰なのか、オレが訊いたら怒るか?」
「いいや、まさか」
小声でそう尋ねてくるフレッドの表情がまだ少し固いような気がして、僕はわざと声のトーンを上げて答えた。
「彼女は僕と同い年の友達。Aっていうんだ」
「そうだったのね!素敵じゃない」
「気を悪くしないでほしいんだが…お前に同い年の友達がいたなんて、初めて知った」
「そりゃそうさ、今初めて言ったんだから。
気を悪くしたりなんかしないよ」
先ほどまでの重たい空気は一転、いつもの調子で次々と声が返ってくる。
すっかり元通りになったみんなの様子に内心ほっとしながら、僕はぬるくなったアイスコーヒーにミルクとガムシロップを入れ、ストローでくるくるとかき混ぜた。
「…?ヒロ、あんたコーヒーはブラック派に転向したんじゃなかったの」
「ああ…まあほら、甘いのも飲みたくなるでしょ。たまにはね」
ゴー・ゴーの鋭い指摘に苦笑いしながら、指で摘んでいたストローをそのまま口にくわえた。
見栄を張って「甘いものはあまり好まなくなった」なんて公言してしまった以前の自分を今更ながら咎めたくなる。
実は今でも甘いものは結構好きだ。
普通の男子大学生ならあまり好みそうもない、甘ったるいアイスコーヒーを口に含む。
Aも好きな味。
思わず頰が緩んだ。
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みにょん - ドキドキしっぱなしで一気に読んでしまいました。すごく読みやすい文章で主さんの文章力に脱帽です。また気が向いたときにでも続きを書いていただけるとうれしいです(т_т) (4月9日 23時) (レス) @page50 id: 0b8338cd33 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 最近見てみたら凄くハマって!!、続きを待っています! (12月28日 22時) (レス) id: 8c0883e968 (このIDを非表示/違反報告)
きを - 愛してます。一生更新待ってます。 (12月11日 8時) (レス) @page50 id: afeed903d8 (このIDを非表示/違反報告)
あぽろ(プロフ) - 最近ディズニーのハモカラみてベイマ再熱してこの作品という神作品に出会えました、、、なにとぞ、更新をいつまでも待っています、、、、 (9月27日 23時) (レス) @page50 id: ebcad6c5f5 (このIDを非表示/違反報告)
ame(プロフ) - 更新を…待っています…なにとぞ… (8月16日 13時) (レス) id: 7d07391b49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たーた | 作成日時:2015年2月9日 23時