テリトリー

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穂積side


Aは、運動神経がいい。

だから喧嘩も強いんだけど
なにより、球技をさせたら右に出る女子はいない。

去年の球技大会では
ドッチボールで無双してたっけ。


そんなことがあって、クラスとの距離も近くなったせいか
Aに対して好意的な人間が急増した。

いいことだよ。

いいことなんだけど、



「Aさん、俺狙っちゃおうかな」

「美人だし、話してたら抜けてて可愛いとこもあるんだよな」


なんて声も聞こえてくるわけで。


耳障り。

目障り。

幼馴染として、牽制してやった。


ひろくんみたいにハグはできなかったけど。



ただ、Aと肩を組んで(というか一方的に腕を乗せていただけ)気づいた。
幼馴染って言っても、こんなに近づいたことは無かったと。



「怜久？どうした？」



声をかけてきたくっしーに、



「なんでもない」


と、素っ気なく返して教室へと向かった。

多分今の顔見られたら情けない顔してそうだから。




俺たち5人は同じクラスになった。

私学文系を狙うクラスは2クラスしかないからほぼ必然的だけど。

中学でもAと同じクラスになることはなかったから
なんか新鮮な気持ち気分だ。


そして、なにより田中がいない。

視界に入らなくて快適。

そう思ってたのに。





「Aさん、今日の昼から一緒で大丈夫？」

『大丈夫。』



入学式の翌日から、全然普通にクラスに来やがる。

しかも、爽やかな笑顔付き。

笑う必要ある？




田中の笑顔は嫌いだ。

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