テリトリー

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櫛谷side


「はぁー」


怜久がため息をついた。

最近、思い詰めたような顔してるから
また何か考えてるんだと思う。



マ・メゾンのデミグラスハンバーグを口に入れると
ソースの酸味が口に拡がって幸せな気分になる。



「何悩んでるの？」



カツ丼をつついている怜久にそう聞くと



「くっしーから見て、Aってどんなやつ？」


なんて言うから
あー。
Aのことで悩んでるのか。と察した。



「んー。あまり本心を見せないけど、優しい子だよね」



多分、俺らの中では1番優しくて、
1番俺らのことを考えている人だ。



「だよなー。」



もしかして、Aのこと。。。？



「Aって、くっしーから見てもかわいい？」

「かわいいと思うよ。まぁ、美人って言う方が当てはまるけど」



大きな瞳に
ぷっくりと膨らんだ唇。

黒く長い髪は、艶やかで
いつも風になびいて。


何かしらのモデルにスカウトされたとは聞いたことがある。




「あいつ、恋愛したいんだって」

「へぇー。。。。。。。えええ？！」

「やっぱり、くっしーは、その反応だよな」

「それ本人が言ってたの？」

「うん。駒井ちゃんに話してるの見た。」




信じ難いけど。
本人が言ってるならそうなんだろう。


いままで、告白されても全部塩対応で断ってきたAは、
恋愛に興味はないと言い切ってきたのだ。



中学では恋愛対象が女なのでは？
と噂されるほど男に対してなんの興味ももってなかったのに。



「怜久は、それを聞いてどう思ったの？」

「あいつに恋愛とか無理だろ。あんな無愛想なやつ。」


怜久が焦ったように大きな声で言った時

タカさんが「ばかっ！」と、慌てて怜久の頭を抑えた。




『悪かったね。無愛想で。』



聞き馴染みしかないその声に
怜久と俺はゆっくりと振り返った。

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