テリトリー

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夏休みはいよいよ佳境を迎えて、
宿題に追われている。


計画的
なんて言葉は私の中にはなくて、

1ミリも進んでいない冊子をようやく開いてみた。



『いや。分からなすぎる。』



分からなすぎて、解答を丸写ししてしまおうか。
なんて考えがよぎる。



いや。



先生には絶対バレる。

バレたところで注意されることはないだろうけど、
あいつ解答写すやつだ。って心の中で思われるのは
なんだか癪に障る。


こんな時助けてくれそうなのは櫛谷しかいない。

けど、瑛茉ちゃんと付き合ってるのに2人で会うのは気が引ける。


こまは、友達との予定を入れてるって言ってたし。。。。


穂積？しかいなくない？
最近花蓮ちゃんとも別れたみたいだし。


連絡してみると、あっさりOK。
ってことで穂積の家に向かった。


同じ間取りなはずなのに
家具の配置や匂いが全然違って
違う家に来たみたい。



『おじゃまします』

「リビングじゃなくて、俺の部屋でもいい？」



穂積が麦茶をつぎながら言った。



『場所はどこでもいい』


久しぶりに入る穂積の部屋は
整理されていて無機質な印象を受けた。


適当に荷物を置いて、
センターテーブルに宿題を出した。

床に座ってベッドに持たれると穂積の匂いがする。

あ。
これ、ダメなやつだ。

寝そう。。。



エアコンから送られてくる涼しい風と、
カーテンからのぞく日差し。


これは眠れる。






カランッ


と、氷がグラスの中で落ちる音に目を覚ました。



そこにはトレーに麦茶を乗せたまま
部屋の入口に立っている穂積。

冷ややかな視線。



『あ。』

「何しに来たんだよ」



呆れたような顔をして、私の向かいに座った。



『ごめん』

「早く終わらせよーぜ」



意識を飛ばしていた時間はほんの数分だったようで
私は慌てて宿題を開いた。


それにしても
穂積って、こんなに静かだっけ？


かれこれ2時間近く一緒に宿題をしているけど
私が聞いた問題をさらっと教えてくれる。

勉強は櫛谷にしかきいたことなかったけど




『穂積って、なんでも出来るんだね』

「は？」

『頼もしいね』

「はぁ？！」



ペンを進める手を止めて

私を真っ直ぐ見る。




その顔が真っ赤で



この夏、2度目の照れた穂積が拝めた。

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