テリトリー

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「あ。やっぱり穂積だー！」


チョコバナナを買って1口食べた時、
花蓮ちゃんに声をかけられた。


「あれ？Aさんと2人？」


誤解されちゃう。


「いや。いつものメンバーできてたんだけど、下駄が壊れたから履き替えに行ってる。俺たちはその待ち。」


穂積が説明すると、ほっとしたように笑った花蓮ちゃん。



『私、ここで待ってるから2人で回ってきたら？』



そう提案すると、



「え？いいの？」



と嬉しそうに言うから、
彼女は本当に穂積のことが好きなんだと感じた。



『行ってらっしゃい』



有無を言わせず穂積の背中を押すと、



「なんかあったら連絡して」



そう言って人混みに消えていった。
通路の端に立てられているポールに体重を預けて通り過ぎる人たちを見る。

みんな、楽しそうに笑っている。

みんな、幸せそうだ。



私はひとりじゃない。


だけど、少しだけ孤独感。




こまを好きな櫛谷。

櫛谷を好きな瑛茉ちゃん。

瑛茉ちゃんを好きな宏紀。

花蓮ちゃんと付き合っている穂積。




いくら堅い友情があったとしても、
恋愛感情には勝てない。

愛する気持ちには勝てないから、
各々が好きな人や大切な人のために行動をしたとしたら、

私は独りになってしまう。

今みたいに。




なんだこれ。


なんだこの気持ち。


誰でもいいから、
私を好きになって欲しい。


誰でもいいから、
好きになりたい。



持っていた鏡に自分の顔を映す。




無表情。



『少しでも感情が外に出ればいいのに』



だれもこんな無愛想なやつ
好きになんてならないから。



チョコバナナの串についたチョコが
指について気持ち悪い。


ちょっと離れるくらいいいよね。



そう思ってトイレに向かった。

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