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出会いは突然訪れた。キャンプを終え、オープン戦が始まろうとしていたとき。身体に不安を抱えていることもあって、気が立っていた俺は、どうにかして冷静を保ちたかった。ふら、と訪れたいつもの喫茶店。変わらず迎えてくれたマスター。
｢…上林くん、今日はいつもより砂糖多めにしておいたわ｣
｢…っす｣
少しでも休まると良いけど、と囁く彼女は、なんでもお見通しなようだった。ぽつりぽつりと話し始めた俺を、ただ包むような目で、暖かく受け入れてくれた。
そんなときだった。
｢葵ちゃん、いらっしゃい｣
……あ、でた、噂の葵ちゃん。
そう思い、ちらっと横目でそのひとを見た。その瞬間、マスターが言っていたことがよくわかった。
(春、みたいなひとだ…)
彼女からは花とインクと石鹸の香りがした。とても落ち着かせてくれる香りだった。雰囲気のある彼女は、にこにこ笑いながら、ショコラが焼けていることを素直に喜んでいた。
太陽とは無縁な白い肌、少し猫っ毛な細い髪、華奢な首筋を辿って見えるかわいいピアス、シンプルな洋服なのにとてもお洒落な、そんなひと。花の香りがする彼女には、優しい色の花束が似合いそうだと思った。
人生で初めての、一目惚れだった。
それをバレたくなくて、平然とマスターと話をした。彼女の目は、見透かすことが得意だから、今思えば、あのときすでにバレていたんだと思う。証拠にマスターは、自然な流れで彼女に俺を紹介した。さらには、オープン戦を見に行くとまで言ってのけ、連絡先まで渡してきた。
幸い、"葵ちゃん"は何も気付いていない。にこにこ笑う彼女は、ふわっと俺を巻き込むくせに、俺の気持ちなんて何も分かっていなかった。
俺のことを知らない彼女からしたら、野球選手なんて漠然とした存在だろう。ただ絵の話をする彼女は、透き通ってしまうくらいに頬を緩めて、そのままかわいい笑顔を俺に向けた。野球選手なんて肩書きを、彼女は何ひとつ見ていなかった。
それが、ただ嬉しかった。絵のことを知らない俺に、純粋な気持ちで話してくれた彼女が、なんだか尊かった。
ショコラを頬につけて、絵の話を夢中でして、作品を頼まれたときには、溶けてしまうような表情で喜ぶ彼女を、もっと知りたいと思っていた。
｢誠知くん、｣
そう、控えめな声で俺を呼ぶ、葵さん。このひとから愛を伝えられたら、俺はすごくしあわせなんじゃないかと思った。
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aoi(プロフ) - みゆうさん» こちらこそです＊楽しみにしています。 (2019年3月5日 1時) (
レス) id: 1e8b3648c1 (このIDを非表示/違反報告)
みゆう(プロフ) - aoiさん» 見てきただけて嬉しいです！ありがとうございます！ (2019年3月4日 22時) (レス) id: faf8ae436c (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - みゆうさん» とてもありがたいお言葉ありがとうございます…！意識している部分でもあったので、嬉しいです＊そして実は私、みゆうさんのおはなし拝見させてもらってます。私こそ更新楽しみにしています＊ (2019年3月1日 0時) (レス) id: ddb827d49e (このIDを非表示/違反報告)
みゆう(プロフ) - aoiさんの書く小説、主人公の見ている景色や生活の雰囲気だったり、想像力が膨らんで、心がほっこりする言葉の使い方が凄く好きです。更新楽しみにしています！ (2019年3月1日 0時) (レス) id: faf8ae436c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：aoi | 作成日時：2019年2月28日 23時
