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ーーー そんなこと言われたら、私、情けなくなるじゃないですか。



初めて見せた、結城さんの本音だと思った。涙を流す彼女は、やっぱり美しくて。その瞳は、少しの愁いを含んで、困りながら私を見つめた。



「きっと誠知くんの彼女が、葵さんじゃなかったら、素直に諦められなかったと思います」

「え?」

「…葵さんが羨ましい。でもこれはきっと、ないものねだりなんですよね」

「結城さん、」

「葵さん、私、この仕事を辞めることにしました」

「…え…!」

「これだけいろんなひとに迷惑をかけて、仕事を続けていけるような人間にはなれません」

「そんな、」

「…葵さんにも、…誠知くんにも迷惑をかけた。正直、それが許せないんです」

「…私が引き止めたら、傷つけてしまいますか?」

「……」

「結城さん、私、うれしかった。絵を見つけ出してくれて、光を当ててくれて」

「葵さん、」

「結城さんが、このお仕事をいやになって、辞めたいというのなら…私は何も言えません」

「…」

「ただ、私や誠知くんに気を使って辞めるのなら、私は違うと思う…!そんなに自分自身に厳しくしないでください。結城さんは頑張りすぎるから、…甘やかすくらいでいいんです」

「…っ」

「…きっと誠知くんは、まだまだ結城さんと一緒に戦いたいはずです。辞めるなんて、誠知くんも選手のみなさんも、悲しむと思います」



静まり返った一室は、少しだけ澄んだ空気がした。彼女の気持ちが、やっぱり涙として溢れてしまうから、私はそれを拭うことしかできない。

結城さんに渡した、お気に入りのハンカチ。震える掌でそれを受け取った彼女は、ふと、諦めたように泣きながら笑った。



「明日からも一緒に戦おう、」

「え?」

「振られたときに、そう、誠知くんに言われました」

「…」

「誠知くんがどう思っているのか、私なんかよりずぅっと、葵さんの方が理解されてる。…勝てませんよね、やっぱり」

「結城さん、」

「…はー、なんだか笑えてきた」



少しだけ胸がすっとしました、彼女が笑う。なんだか瞳に濁りが消えて、私まで嬉しくなって、つられて笑ってしまった。


甘えさせてくださいと、彼女は退職しなかった。こっそり誠知くんから、お人好し、と言われたけど、当たり前の風景が消えてしまうのは悲しいことだよ、と呟くと、葵が彼女でよかった、と低い声が囁いたから、恥ずかしくて知らないふりをした。

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aoi(プロフ) - みゆうさん» こちらこそです*楽しみにしています。 (2019年3月5日 1時) (レス) id: 1e8b3648c1 (このIDを非表示/違反報告)
みゆう(プロフ) - aoiさん» 見てきただけて嬉しいです!ありがとうございます! (2019年3月4日 22時) (レス) id: faf8ae436c (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - みゆうさん» とてもありがたいお言葉ありがとうございます…!意識している部分でもあったので、嬉しいです*そして実は私、みゆうさんのおはなし拝見させてもらってます。私こそ更新楽しみにしています* (2019年3月1日 0時) (レス) id: ddb827d49e (このIDを非表示/違反報告)
みゆう(プロフ) - aoiさんの書く小説、主人公の見ている景色や生活の雰囲気だったり、想像力が膨らんで、心がほっこりする言葉の使い方が凄く好きです。更新楽しみにしています! (2019年3月1日 0時) (レス) id: faf8ae436c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:aoi | 作成日時:2019年2月28日 23時

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