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静かなキスをした。若い男の子らしくない、穏やかなものだった。離れた唇は、なにも紡がず、ただただ照れくさそうに下を向いていた。私も言葉を発せずに、彼が受け取った絵を見つめる。


ーーー葵さんがすきです。


誠知くんがはっきり口にした言葉。きっと彼は、勢いで物事を言うタイプではない。出逢って間もないことも、全部踏まえた上で、伝えてくれた想い。

その日は、何も言えなかった。私も誠知くんが気になっていて、好きだと感じていることは、きっと気付いている。だけど、簡単に口にしてはいけない気がして、伝えられなかった。



「…そろそろ、帰ります」

「うん、」

「絵、ありがとう。大切にします」

「うん」

「葵さん」

「ん?」

「近いうちに返事、聞かせてください。待ってるんで」

「うん…誠知くん、あのね」



やっぱり私、誠知くんのこと。そう慌てて言おうとしたのに、彼の綺麗な人差し指が、私の唇前で立った。しっ、と言われ、驚いて固まってしまう。



「葵さんの気持ちがちゃんと固まってから、伝えてほしいっす」

「誠知くん、」

「…俺、葵さんのこと、簡単に手放せそうにないんで。好きだと思ったけど、やっぱり違いましたっていうのは、なしでお願いします」



だから、きちんと考えて。そう、優しく言われ、頭を撫でられた。そんな男らしいことを言われたら、恥ずかしくなってしまう。ああ、きっと、顔は赤いし、緊張して目が揺れている。


ーーーすきだよ、すき。


そう、伝えてしまいたい。やっぱりいやだなんて、絶対言わないよ。それなのに、その気持ちを誠知くんは聞いてくれなかった。簡単に答えを出すなと言われても、私の気持ちはほとんど決まっているのに。



「誠知くん」

「ん?」

「……試合、見に行くね。がんばってね」

「うす、がんばります」



それじゃあ、と片手を上げて、軋む扉から大きな背中は出て行った。ああ、どうしよう。身体が熱いや
。誠知くんから伝えられた気持ちは、私をわくわくさせて、どきどきさせて、それなのに。少し切なくさせた。


誠知くん、私ね。誠知くんがすきだよ。でも、誠知くんが言った通り、もう一度自分の気持ちを確かめてみたいの。彼が向き合っている、野球というスポーツと、それを仕事として生きる誠知くんを、私が支えられるのかな。


彼と付き合うのは、きっといろんな覚悟がいる。

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aoi(プロフ) - みゆうさん» こちらこそです*楽しみにしています。 (2019年3月5日 1時) (レス) id: 1e8b3648c1 (このIDを非表示/違反報告)
みゆう(プロフ) - aoiさん» 見てきただけて嬉しいです!ありがとうございます! (2019年3月4日 22時) (レス) id: faf8ae436c (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - みゆうさん» とてもありがたいお言葉ありがとうございます…!意識している部分でもあったので、嬉しいです*そして実は私、みゆうさんのおはなし拝見させてもらってます。私こそ更新楽しみにしています* (2019年3月1日 0時) (レス) id: ddb827d49e (このIDを非表示/違反報告)
みゆう(プロフ) - aoiさんの書く小説、主人公の見ている景色や生活の雰囲気だったり、想像力が膨らんで、心がほっこりする言葉の使い方が凄く好きです。更新楽しみにしています! (2019年3月1日 0時) (レス) id: faf8ae436c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:aoi | 作成日時:2019年2月28日 23時

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