10話 ページ12
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再び沈黙のまま寮に到着した
シートベルトを外しながらまた来いよと言った兄
私がまたここに来ることなんてあるのだろうか
今日感じた劣等感や空虚感
何も持っていない残されていないと感じにわざわざ訪れる必要はあるのだろうか
『予定が合えばね。』
そう返すと悲しそうな顔をした兄
そんな顔で見ないでほしかった
泣きたいのも悲しみに浸りたいのもこっちだというのに
優「また連絡する。」
『いいよ。ほっといてって言ったでしょ。』
優「来いよ、絶対。後、俺の連絡無視すんなよ。親父とお袋にもろくに連絡してないんだろ。あんまり心配かけんなよ。」
兄は私の頭にポンと手を乗せると、ドアを開け車を降りようとした時寮のドアが開く音がした
「あれ優磨くん、健斗くんたちとご飯行ったんじゃないんすか?あ、もしかして彼女ですか?!」
話しかけてきたのは恐らく後輩の選手
顔は見えないけど多分同世代
優「ちげーよ。妹と飯。」
「なんだつまんないの。てか優磨くん妹さんいたんですね。」
早く帰りたいとは思うがドアを閉めてくれないので2人の会話に耳を傾けると、どうやら私のことを彼女だと勘違いしているようだった
優「妹のA。19歳。」
なぜか始まる私の紹介
車に乗ったままというのも失礼な気がしたので一旦降りて挨拶をする
『こんばんは。初めまして、鈴木Aです。兄がいつもお世話になってます。…あ。』
自己紹介をして顔を上げるとそこには今日の試合で私が目で追っていた人物
「初めまして、安部裕葵です。こちらこそ優磨くんにはいつもお世話になってます。」
『あべ…ひろき…』
これが私と裕葵くんの出会いだった
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作者名:あや | 作成日時:2019年5月2日 21時