東京合宿・day4 3 ページ13
「───……満足しましたか、及川さん」
Aが灰場達とこの場を去ってから、ポケットから携帯を取り出すと俺は溜息混じりに電話の向こうの主──及川さんに問い掛けた。
「ぜんっぜん満足じゃないよ！っていうかこれで満足できると思ってんの！？電話は気が向いたらとか言われるし、音駒にはやたら可愛がられてるし……！俺だって可愛がりたい！！」
「いや……及川さんはもう十分可愛がってると思いますけど……」
電話の向こうから及川さんの喚く声が聞こえて来る。その中身は余りにも相変わらずで、俺は更にこっそり溜息をついた。
この貴重な昼休みに何をしているかというと、及川さんの命令でのA観察だ。断ろうと思ったが、戻った後の事を考えると怖すぎて無理だった。Aすまん………
「っていうかあの写真！なんなの音駒のジャージまで着てるのどういう事！？赤可愛いけど。っていうかあの写真被写体が元々いいからっていうのもあるけどもの凄くよく撮れてるじゃんそこだけはグッジョブ」
Aの様子と写真を送れ、との事だったので先程こっそりと洗濯物を干しているAの写真を撮ったが……自分で言うのもなんだがこれがまたよく撮れていた。
洗濯物を干しつつ空を見上げ微笑んでるA。ポニーテールの髪は風に靡き、バックの濃い青空と入道雲のコントラストが、音駒の赤ジャージと黒Tシャツを着たAを際立たせていて、とにかく夏らしい一枚だ。
「及川さんに褒められてもなんか嬉しくないっスね……っていうか何なんですか、突然様子と写真送れとか言い出したと思ったらAと連絡取ってなかったんですか」
「うるさい。相変わらずクソ可愛くない奴だな！色々とこっちにも事情があるの！」
「事情って……っていうかいつも通り普通に連絡したらよくないですか」
「お前それで俺が今度こそ完璧に嫌われたら責任とれんの！？！？」
何でいつものように連絡をしないのかと問いかけるとまた捲し立てられてしまった。連絡をしたら嫌われる？この人Aに何したんだ。
「Aに連絡してくるなって言われたんですか？それもう既に嫌われ───」
「わ──！？何言おうとした今！？なんかとんでもない事言おうとしたよね今！！バカなの！？とにかくお前は黙って定期的に報告と写真送ってればいいの！！後送った写真はすぐ消せ。俺のフォルダだけにあったらいいから。じゃあな！」
及川さんは捲し立てまくった挙句一方的にに電話を切った。なんなんだ……
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作者名：さくら | 作成日時：2020年6月10日 22時
