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「おい!お前!!」
影山くんによく似た顔立ちの、50代くらいの男が叫んでいる。恐らくこの国の王。
その人がさけんだ言葉は私に向けての言葉だ。
「王宮を破壊して何がしたい!何も変わらないぞ!」
必死に叫んでいるのを見て、思わず鼻で笑ってしまう。馬鹿みたいに叫んで、結局は自分が助かりたいだけで、生にしがみついている。
「貴方を殺せばこの国の方針は変わるでしょう?汚い人体実験ばかりして、何がしたかったの。だから100年前と同じ事になるの、分からない?」
バカにしたように、笑いながら私は言った。
顔を赤くして、言葉をつまらせる。図星だったようだ。というか、もう知っていた。人体実験を繰り返しているのを、既に知っていた。
「ぐ……し、しかしっ!」
「しかし?何か反論すべきところがあった?」
もう、この国は腐りきっているから。だから壊してまたやり直さなくてはならない。
「あぁ、最初の質問、答えてあげる。私ね、王族が嫌いなの。トップに君臨する人がいるとすぐ人体実験始めるじゃない。だからね、壊さなきゃ」
国王の感情を全て恐怖に塗り替えて、立ち去る。国王を殺すのは今じゃない。もう少し先だ。
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「なあ、そろそろ行って平気じゃねえの?」
「んんんん……クロちゃんうるさい!俺も気になってんだから黙ってよ」
「お前らうるさい!」
3年生組はこんな時にもじゃれあっている。破壊された、魔物で溢れかえった街の中を走っていた。
「3年生仲いいよなー」
金田一が国見の方を向いて言った。国見はこの状況でも眠いのかあくびをしながらうるさいだけでしょ、と言った。
「ちょっと王様」
月島が影山に話しかける。
「あ?なんだよ。つか王様じゃねえし」
あんなクソ親父と一緒にすんな、と舌打ちをしながら言う。
はは、と月島は笑ってから、聞きたいことを言う。
「実の親をこれから殺すって、どんな気分?」
影山は月島を一瞬見てから、
「すげえ最悪な気分」
とだけ言って、前を見た。
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作者名:凛花 | 作成日時:2017年1月9日 16時