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「夕闇燈は、まだこの世にいるよ」
その一言は、ほぼ全員が驚くような一言だった。
「な、だって夕闇燈は及川先輩がAに憑いてたのを祓ったはずで……」
その赤葦京治の言葉を遮るようにして、及川は組んでいた腕を解きながら言う。
「確かに俺が祓ったよ。でも、それでも祓えなかった。つまりあいつはただの亡霊じゃないって事だ」
その言葉に頷いて、研磨は言葉を繋げた。
「夕闇燈は蒼海Aの守護者を乗っ取った。それで、守護者になりすまして今日を待っていた。100年間ずっと」
赤葦は眉を寄せ、意味が分からないと言いたげな顔をしている。それは、実の妹を思ってのことだろうか。
「じゃあ、夕闇燈が蒼海の人格を乗っ取ったのか……？」
「違うよ。蒼海Aは、了承した。夕闇燈のしたい事に」
蒼海Aは人類の敵となった。だから……
「……俺は、殺さなきゃいけないと思うよ」
及川が言って、黒尾は目を見開いた。
「なっ、冗談だろ！？」
「冗談じゃない。人が大勢死ぬくらいなら、たとえ蒼海ちゃんだろうと殺すのが1番いい」
黒尾を睨みながら、及川は淡々と、まるで感情を押し殺したように言った。
「及川さん、それは、王族を、俺の家族を守る立場としての意見ですか」
そう、影山は及川を責めるように聞いた。それは、遠回しに蒼海を思いやって言ったことなのだろう。王族を守るためだけに蒼海を殺すなと、そう言いたいのだ。
「……そうだよ。でも、王族を守る立場じゃなくてもそう思っ＿」
「ふざけんなよ」
及川を遮って、黒尾が声を荒らげて叫んだ。驚いた及川は黒尾を勢いよく見る。
「王族を守るからAを殺すって？……Aは、俺達の仲間じゃねえのかよ？！」
きっと、そんな事は及川も分かっていた。分かっていても、それが自分の役目だと、昔夕闇燈を止められなかった自分の役目だと思っている。
「その考えを変えないなら、俺はお前に協力しない。勝手にやらせてもらう」
そう言い捨ててから、黒尾は後ろを向き、ドアの外へ出た。
教室に残ったのは静寂と、気まずい雰囲気だけ。
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作者名：凛花 | 作成日時：2017年1月9日 16時
