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『酷いよ』
「酷くないよ。ねえ、苦しかったんでしょ」
また、あの場所だ。私と燈が向かい合って、角を生やした私の本当の守護者が真ん中にいる。
でも、今回は違った。虚ろな瞳をして、私の本当の守護者は私を見ている。助けて、そう訴えかけているようで、胸が痛くなる。
すぐ、助けるからね。
『苦しくないよ。Aが裏切ったから今は苦しい』
「そういう事じゃないよ。ずっと私の中にいて苦しかったんでしょ」
微笑みかけて、そう言った。夕闇燈は下を向いて、私とよく似た顔で辛そうに、苦しそうに笑う。
『そうね。寂しくて、苦しかった。きっと、この子もそうだったのね。そろそろ、解放する』
「あぁ、でも、まだ待ってよ。私のやりたい事はまだあるの」
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「……A」
テツ先輩が心配そうな顔で私の顔をのぞき込む。
「大丈夫ですよ。夕闇燈の加護はなくなりましたけどね。少し、やりたい事があって」
そう言いながら、また王宮があった場所に向かう。
あんな事を言った後で、許してくれるだろうかと少し心配になるが、影山くんがなんとかするかな、と考えるのをやめた。
「あ、いた」
王宮の前で、国王を見つけた。しかし、あまり国王に用はない。
怯えた顔をされるが、相手にしたくはないので、無言で歩みを進める。
崩壊しきった王宮の、奥の方に進む。
「A、何かここにあるの？」
赤葦先輩が聞いてくるので、答える。
「夕闇燈の骨です。遺骨がここにあるので。もうだいぶ朽ち果ててると思うのでそんなに長くは持ちませんが……及川先輩と話す時間は保てると思います」
「え、俺？」
「そりゃ、及川先輩以外に夕闇燈と話したい人はいないでしょう」
「俺も話したくないって……」
「あはは」
そんな会話をしてから、私は夕闇燈の遺骨を探す。
「あった。……燈、出てきて」
『……ありがとう』
その言葉に、少しだけ嬉しくなって、うん、とだけ言った。
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作者名：凛花 | 作成日時：2017年1月9日 16時
