【HQ】優しさに触れる【短編集】

澤村大地［美穂さんリクエスト］ ページ28

『潔子ちゃん、お疲れ様』

「Aもお疲れ様」

スクイズを洗いにきたところで、潔子ちゃんと会った。今日は終わるタイミングが同じだったようだ。

『男子、更に熱入ったみたいだね』

「うん、メンバーも揃ったしね」

『そっか』

気をつけて帰ってね、なんて言って潔子ちゃんと別れる。







潔子ちゃんと仲良くなったのは、二年の途中だ。それまでは全く関わりがなかった。存在は知っていたけど。

仲良くなれたのは嬉しいことだけど、きっかけは私にとっては最悪だった。









私は現在、女バレのマネージャーとして部活をしている。

けれど、潔子ちゃんと仲良くなるまでは、プレイヤーだった。

二年の時、膝を故障して、医者からプレイヤーとしての復帰はできないと断念されるまでは。

私はリハビリもしたし、諦め切れなかったけど。日常生活に支障はないが、激しい運動は激痛を伴うし、ドクターストップもかかっていた。それに、自分がもう飛べないことは自分が一番わかっていた。



私は同学年の中で誰よりも早くベンチに入ったし、レギュラーにもなった。先輩からもキャプテン候補だと言われていた。

バレーが好きだった。女バレのチームメイトが練習を終わっても、一人でずっと自主練した。

好きって気持ちと同じくらい、負けたくないって気持ちもあったから。ベンチ入りにも、レギュラー入りにも、キャプテン候補だという言葉にもあぐらをかいてはいけないと思った。

それくらい好きだったのに。

今ではキャプテンは結が務めていて、WSも結だ。

私の居場所はコートのどこにもない。

結は明るくて、良い子だと思う。キャプテンにも向いている。私とは違って、周りを和ませたり、団結させる力がある。中学でもキャプテンだったし。

認めているんだ。だけどWSのポジションだけは譲りたくなかった。

マネージャーに転向した後も、結がプレーするところから目を背けたくて、そこにいたのは自分だって叫びたい気持ちばかりで。

結は何も悪くないのに。結のこと心から応援できない自分がいて。自分の性格の悪さを笑った。









嘘だ。本当はそれだけじゃない。

私の好きな人である澤村のことを好きで、女バレもそれを知っていて、応援していて。

澤村は誰にでも優しいし、仲良くするけれど、特に親しいのは結だったから。

恋心での嫉妬も含んでしまってるんだってのも、わかってるんだ。

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