【HQ】優しさに触れる【短編集】

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結は澤村と中学が同じで、その時も今も、キャプテン同士で、同じ立場で。あの二人が話していると、話しかけづらい雰囲気がある。

だから好きになったのも私の方が遅い。そして周りに好きだと打ち明けたのも、結が先だった。

打ち明けたもんがち、みたいなところが女子にはある。だから私はずっと周りに打ち明けられないでいるし、周りが結に脈ありだとか囃し立てる時も、愛想笑いしかできずにいる。

なんて中途半端な態度。





___私が澤村のことを好きになったのは、高１の夏。

先輩も同級生も帰った後、一人で自主練していた時だ。







「Aさん、だよな？良かったら、一緒に自主練しないか？」

そう言って声をかけてくれた澤村。その時の裏のない笑顔にやられたんだと思う。

それから、二年に上がるまではずっと一緒に練習してくれた。

最初は遠慮していたけど、東峰と菅原と俺で奇数だから、ペア組むのに丁度いいし気にしないでって言って
くれて。

東峰も菅原も素敵な人たちで、快く迎えてくれたし、澤村が用事で居残りできない日にも声かけて練習してくれた。

２対２をしてくれたり、アドバイスをくれることもあった。毎日楽しかった。

帰りは遅くなったからって最寄り駅まで、一番家が近い澤村が送ってくれた。

その時の私は、バレーも恋愛も本当に上手くいっていた気持ちでいたんだ。






二年に上がって、後輩が入ってきたことで、居残りの人数も増え、偶数にもなったようだし、一緒に練習することがなくなった。

それに。結も居残り練習始めたから。私はもう一人じゃなくなったから。

相手ができて嬉しいことでもあったけど、澤村と結の仲良くする姿を見ることになるし。

帰りは中学が同じだから、家も近い澤村と結が一緒に帰るのは必然で。

自然と澤村と私の距離は開いていった。別に、すれ違えば挨拶はするし、話もするけど。

でも、グッと話す機会はなくなった。

帰り道は、最初、澤村と結が最寄り駅まで送るって言ってくれたけど、友達と帰るから、とか理由をつけて遠慮した。

あの二人と帰るなんて耐え切れなかった。身内ネタにはついていけないし。いい雰囲気の二人の間に入るだなんてこと、できない。

ギリギリまで部活してるところなんてバレー部しかないし、友達なんていなかったけどね。

そうやって二人をなるべく視界に入れないように頑張ってきた。その分、菅原と東峰とは仲良くなれた気がする。

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