02 TPOをわきまえろ ページ4
「おそ松〜!酒!酒切れた!」
「え〜もう?お前飲みすぎだよ。何本飲んでんの」
空になった缶を彼に押し付けながら、ふにゃふにゃとちゃぶ台に顔を伏せる。
私と同じく赤ら顔のおそ松は、空き缶を逆さに振って「あれ?」と首を傾げた。
「ねえ俺のは?飲んだ?もしかして」
「うん。買い足してきて」
「はあ!?ふざっけんなよお前が行け!」
「うー、頭に響く…」
ぎゃんぎゃん喚くおそ松に、「早く行ってこい」という意味を込めてしっしと手を振る。
盛大にパチンコ大負けしたんだから、今日ぐらい優しくして欲しい。
そんな私の心を察したのか、おそ松はチッと軽く舌を打つと、しぶしぶ玄関を出て行った。
「……何だかんだ優しいとこあるよなぁ」
お酒が回ってふわふわする頭でそんなことを考えつつ、きょろきょろと一人になった居間を見回す。
部屋に通された時は意外に整理整頓されて爽やかな印象だったけど、今は床に空き缶やらお菓子の袋やらが乱雑に転がっている。
空になったビールの缶を拾い上げていると、ふと机の上に置かれているクッキーに目がついた。
美味しそうだな〜なんて思いつつ、ひょいとそれをつまみ上げる。
……そして、視界の端に映る、昔懐かしい真っ赤なあやとり。
「………」
仕方がない。酔っていたのだ。
そう言い訳するほかない。
こんなバカな行動一つが、これからの人生にどんな影響を与えて、どう分岐するかなんて、その時の私に分かるはずもなかった。
……どうせ暇だし、一人だし。
思い立ったが吉日(?)。
私は軽い気持ちで、赤いあやとりを使い器用にクッキーを縛っていく。
「…できた!秘儀・亀甲縛り!」
いやらしい画像なんかでよくあるその縛り方に、一人で何やってんだと思わず吹き出した。
ぷらぷらと紐を持ってクッキーを揺らしながら一人下品に笑っていると、スパァン!と豪快な音と共に襖が開いた。
「あはは、はは………は…?」
突然過ぎる出来事に、ニコニコと笑った表情のまま視線を向ける。
ぴたり、襖の奥に潜む紫と青。
二つの人影と、目が合った。
一瞬分裂したのかと本気で信じてしまうほど、おそ松によく似た見知らぬ二人に、開いた口が塞がらなくなる。
「……アンタ、人の家で何やってんの?」
怪訝な顔で私を見る、目の前の男たちは誰なのか。
そんな事よりも、この頭がおかしい遊びを人に見られてしまった戸惑いで、私の脳は溢れ返っていた。
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スカイ(プロフ) - 本当に好き....!!!めちゃめちゃ面白いです!作者様がまた書きたいと思いましたら、更新して頂けるととても嬉しいです!待っています! (2020年6月2日 18時) (レス) id: a0f03080e5 (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもちもんだみん(プロフ) - おもしろい〜! (2019年2月14日 14時) (レス) id: bcc917b3e1 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモ(プロフ) - ナバポさん» コメント有難うございます!こじらせクズがとても好きなんです〜!楽しんでもらえてとても嬉しいです! (2017年12月23日 12時) (レス) id: 63c1855969 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモ(プロフ) - 俺の嫁は二次元(キリッさん» コメント有難う御座います^^年に二度ほどしかない更新ですが楽しんでもらえたら嬉しいです! (2017年12月23日 12時) (レス) id: 63c1855969 (このIDを非表示/違反報告)
ナバポ(プロフ) - 二人がクズをこじらせている笑面白かったです! (2017年6月14日 20時) (レス) id: 03f7a55e36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨモ | 作成日時:2015年12月15日 21時