【おそ松さん】頼むから燃えてくれ！【色松】

20　やっぱり興奮する ページ22

「いや、もうホント勘弁して下さい……」



婚姻届を差し出しながら玄関のドアを閉めると、Aがうんざりと言った様子で頭を抱えた。

なんだかいつもと様子が違う彼女に、首を傾げて一松と顔を合わせる。



「うう……いたた……。あの、今日だけでいいので……」



帰って貰えませんか、と辛そうに眉をひそめるA。
その弱々しい姿が加虐心を煽って来たが、俺はこんな時まで興奮して自分を忘れるような男じゃない。


唇を引き結んで腹を押さえるAに、どうした？と屈んで問い掛けながら目線を合わせる。
一松も心配そうに珍しく猫背を伸ばし、Aの様子をうかがった。



「いや、少し風邪引いちゃって……」

「そうか。熱は？」

「ないですよ」



ずびずび鼻をすすりながら、「ちょっと頭がボーッとするだけで」と力なく笑う。



「……ほんとか？」

「はい。二人の顔見たら悪化したかもですけど」



憎まれ口を叩きながら、時折苦痛そうに眉根を寄せる彼女に、相当辛いんだなと思って体を支える。
乱雑に靴を脱ぐ俺に、Aはぎょっと目を見張った。



「ちょっと、大丈夫ですって！」



弱々しく肩を押し返すAを抱えて、一松と一緒にずかずかとリビングに上がり込む。
暖房をつけてソファにそっと腰掛けさせると、諦めたように「すいません……」と頭を下げる彼女。



「うん、気にするな」



その弱気な態度に俺は興奮……じゃなくて、ぽんぽんと頭を撫でてやる。
ぼーっと俺を見上げるAの顔が何だか赤くて首を傾げると、ハッとしたように目を逸らされた。



「……ケッ。どけクソ松」

「いでっ」



その反応を不思議に思っていると、一松がどかっと俺に体当たりをかましてAの隣に腰を下ろす。



「……俺、何かあったかいもんでも作ろうか？」

「だ、大丈夫です」

「ほんとかよ」

「は、はい……」



問い掛けながら、するり。
一松の手のひらがAの柔らかな手に置かれる。

大人気無いのは分かっているが、少し嫉妬して俺もAの隣に腰を下ろすと、彼女の頭を肩に乗せて反対の手に指を絡ませた。



「……クソ松ゥ…」

「ヒィッ！」



俺を睨む一松から慌てて顔を背け、Aに話し掛ける。



「す、少しは良くなったか？」

「あっ、ハイ。おかげさまで……」



やっぱり頬の赤い彼女はぽそりと呟くと、「ありがとうございます」と少し潤んだ目で俺を見上げた。



前言撤回しよう。

俺はめちゃめちゃ興奮した。



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