八重島さんの夏休み【白鳥沢】 (ページ15)

今日:8 hit、昨日:2 hit、合計:83,604 hit

五十五重島さんページ15

今日のシフトはいつもと違って昼から夜まである。

お昼は忙しいはずなのになんで遅い時間なんだろうと不思議に思いながら、いつものように横断歩道を渡り門の前で自転車を降りた。

白鳥沢は規模が大きいから門の横にある小部屋に守衛さんが座っている。かごに載せてきたリュックを漁り入校許可証を手に取った。守衛さんが私に気づいたようで、こんにちはと声をかけられた。

「こんにちは。あ、これ許可証です」

「はい、通って大丈夫ですよ。
　いつもご協力ありがとうごさいます」

ペコリと会釈をして自転車を押しながら校内に入る。

白鳥沢学園は今日から夏期講習だから、いつもなら聞こえてくる金管楽器のロングトーンも、馬術部の姿もなかった。

静かに生徒を待つグラウンドを眺めながら食堂のドアを開けるとテレビでは高校野球が流れていた。どこが戦っているのかなと確認すると、甲子園で何度も見たことある高校の名前が2つ並んでいた。

あれ、今日のパートさん思ったより少ない。
いつもならもっといるはずなんだけど。

見慣れない景色に首を傾げていると那須さんがAちゃんと声をかけてくれた。

「あ、おはようございます！」

「久しぶりね、どう？少しは休めた？」

「迷惑おかけしてすみません。本当にありがとうございました」

「いいのよ！気にしないで」

今日はいつもより人が少ないですけど、と切り出すと那須さんはあぁ！と言いながら手をポンと打った。

「今日から夏期講習があるじゃない？
　学校が始まるとお昼はこっちの寮の食堂じゃなくて、
　学園の大きな食堂で出すことになってるのよ」

「そうだったんですね」

那須さんはさらに、大島さんたちは応援に行ってるのと詳しく教えてくれた。夏休みの間は三食提供するのと売店業務があるのは知ってたけど、応援もあるんだ。
ということは、今日は夕食担当ってことか。

「Aちゃん、今日もよろしくね〜」

「はい！よろしくお願いします」

大量にきゅうり切るわよ〜と那須さんが腕をブンブン回す。

今日の夕食のメニューは朝確認してきた。
月に一度のお楽しみ、お誕生日献立だ。

.