四半純血のプリンス (ページ28)

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スピナーズ・エンドの古い屋敷には３人家族が住んでいた。
マグル出身の母と半純血の父の間に生まれた少女が３歳になった年のクリスマス。
滅多に家族全員が揃うことのない埃を被った屋敷の中に、人影が２つ。

「ママ、パパはいつ帰ってくるの？」

「さぁ、いつかしらねぇ…きっとお仕事が忙しいのよ。先に寝てしまいましょ」

「ううん…パパが帰ってくるまで起きてる。さっき編んだ手袋渡すの！クリスマスは一緒にお祝いするって約束したんだもん」

暖炉が包む朱色のリビングで、少女は大きなあくびを一つ。
今にも眠りに落ちそうな瞳に映っていた温かい炎が、突如消えた。

「ママ？何も見えない！怖い…！」

「大丈夫。私が側にいるわ…様子を見てくるからここに隠れていなさい。いいって言うまで出てきちゃだめよ」

クローゼットの暗がりに娘を押し込んだ母が、神経質な息を落とすと、暗い屋敷にノックの音が響いた

「…どちら様？」

杖を構え、ジリジリとドアに近付いた彼女の身体が後方へ飛んだ

「お前はセブルス・スネイプの妻か？」

「…えぇ、そうだけど。ご挨拶にしては威勢が良すぎるんじゃないかしら」

少女は、揺れる瞳をクローゼットの隙間に押し付けた
来客は２人。
母を吹き飛ばした者も後ろに控えている者も黒いローブを纏っている。
その顔を覆う仮面が月明かりを浴びて、銀色の妖しい光を放っている
母の姿が見えない不安と恐怖で息をするのも忘れて、その仮面の模様を見つめていた。

「マグルの癖に威勢が良いな。流石は不死鳥の騎士団の一員と言ったところか」

「死喰い人は相変わらずねちっこいわね。こんな闇討ちのようなこと…あの人はもういないのに」

杖を構えたままの男が、後ろを振り返る

「やはりこの女は殺さねばならない。あのお方への忠誠を誓うのならば、な」

無言で歩み出た仮面に、緑色の閃光が轟いた

少女の見開いた瞳にもはっきりと緑色が映る。
その瞳が再び凪いだ夜空のような色を取り戻す頃には、母親の悲鳴は途絶えていた

「…終わったな。魔法省が来る前に引き上げるぞ」

その言葉に頷いた背中が映ったのを最後に少女の目は、闇へと堕ちていった。