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2話 ページ2

「……だから、小官と別れて、くれないか」


茫然自失のAを見ないようにして、理鶯はそう言い放った。

理鶯としても、辛く、重い宣告だった。

番はどちらかの死によってしか解除されない。

つまり、番でありながら「別れる」ということは、Aを一生相手のいないヒートという地獄に落とすことと同義なのだ。

この番関係はΩであるAが軍で狙われるのを防ぐためのものだったが、確かに、理鶯はAを愛していた。


「……わかった。もう、来なくていいぞ。ほら、行ってこい。運命の番といた方が、お前も幸せだろ?」


いじらしい、乙女のような顔で微笑むA。

そこに自分の幸せを願う気持ちを痛いほど見出だして、理鶯は苦しくなった。

頬に手を添えると、Aは目を見開いた。

Aは自分の手を理鶯の手に重ね、伏し目がちにわななく唇を無理やり、でも心から、笑みの形に歪ませた。


「愛してた」


酷すぎる言葉だとわかっていた。

運命の番が見つかっただの、だから別れろだの言っておいて、そんなの。

それがAを傷つけることもわかっていた。

それでも理鶯は、その言葉を口にした。

そしてそれは、Aに対する信頼でもあったのだ。


「ああ、俺もだ」


その言葉を聞き、寂しそうに笑い、立ち上がって、理鶯はAに背を向けた。

ドアの閉まる音が消えた後のリビングには、Aと、理鶯が置いていった合鍵だけが残された。

思い出したように、涙がぽろり、頬を伝った。

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狼鬼(プロフ) - 何回も読み返すほど悲しくて、でもとても素敵な作品です。完結するまでずっと待っています。無理をしませぬようお気をつけください。 (2021年9月10日 22時) (レス) id: 8a6b913a72 (このIDを非表示/違反報告)
龍牙(プロフ) - mikittyさん» コメントありがとうございます!ありがとうございます!! (2021年1月26日 16時) (レス) id: 6c80c43520 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結まで追い続けます! (2021年1月25日 12時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
龍牙(プロフ) - マームさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいお言葉ありがとうございます!!なかなか更新できていませんが、頑張らせていただきます!! (2020年6月28日 10時) (レス) id: 6c80c43520 (このIDを非表示/違反報告)
マーム - めっちゃ好みすぎて何回も読み返しています!!更新頑張ってください!! (2020年6月24日 23時) (レス) id: 12bdf0a400 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:龍牙 | 作成日時:2019年5月11日 19時

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