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思えば成人してから、学生時代ほどに何かに心を打たれることもなくなってきたかもしれない。
そう感じていたのは『彼ら』に出会う直前のことだった。
『彼ら』というのは、私の今現在。仲間と呼べるべき二人のことである。この本を読んでいるあなた方はご存知のことだろうが、万が一のため、説明しておこうか。(本人にはきちんと許可をもらっていますから、訴えないでください)
飴村乱数くん。彼は天真爛漫で、成人男性であるということを疑う程のあざとさ...否、可愛さを持つ青年。
有栖川帝統くん。彼は少し金遣いが荒く、こちらも成人男性であることを疑うほどのがめつさ...じゃなくて、破天荒さを持つ。
ケース1。笑顔。
「幻太郎、僕らと一緒にいて楽しい?」
ある日、いつものように小首を傾げ、少し上目遣いのまま私に話しかけてきたのは乱数の方だった。彼らと私とはそれなりに仲もよく、時々三人で街中に出掛けたりなんかするほどである。私もそんな生き方に不満はなく、精一杯楽しくやって来たつもりだった。それなのに、急にそのような質問をされるものだから、もしかするとそのときの私の表情は引き攣っていたか、或いはがちがちに固まっていただろうと思う。
「なぜそのようなことを聞くのです」
あのときの私の声の小ささと情けなさといったら。言葉や態度にはなんとか出なかったものの、確かに私は動揺していたと記憶する。
いつも可愛げな彼がしてくる質問とはおよそ思えなかったからだ。くどいようだが、非常に驚いた。
「いや、別に...楽しい?」
「...楽しい、ですよ?」
「ふぅ___ん.....」
彼は足早に私を追い抜かすと、くるりと振り向いて言った。
「よかったぁ」
あのときの彼の柔らかな笑顔。柔和、という言葉をそのまま表情で表すとするならきっとあんな表情なのだろうと思う。後から彼に聞いてみれば、あれは特に意味のない質問だったという。ただ、私の表情にはどこか無理をしているような雰囲気があったから心配だったのだ、と。
____嬉しかった。
他の人からみれば普通の笑顔であっても、私にとって彼の笑顔は特別な笑顔。これこそ『絶景』だろう。この事をもとにいずれ小説にしようと思っていたが、結局エッセイになってしまったのは少し残念だろうか。
それでは次にケース2。謝罪。
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作者名:ファイアー@橙蛙不二周助の人 | 作成日時:2018年11月15日 19時