【HUNTER×HUNTER】ピエロの師匠は突拍子もない事がお好きなようで【番外編だけ(part2)】

ハンターキャラって甘い物好きな人多そうですよね、ハッピーバレンタイン! ページ49

眼前の光景が理解出来なかった。

何時もの通り何時もの如く、ヒソカの家に当然のようにいたA。

そこまではよかった。

自分の目の前で始まった、この大掛かりなサプライズは一体何なんだろう。

軽く現実逃避をしたくなった。

積み上がっていくトランプは、普段自分が作り上げる塔の形とそっくりそのまま同じ。

しかし、それを構成している材料は、チョコレートだった。

訳が分からないだろうが、簡単に言うとトランプがチョコレートで出来ているのだ。

それは、溶ける事もなく、傍らの鍋に入れられた大量のチョコから作り出され、静かに積まれていく。

Aの手は使われていない。

ソファに悠然と足を組んで座り、背凭れに腕を乗せ、まるで悪の組織の首領のように赤ワインを飲んでいる。

そういえば、チョコにはバニュルスが合ったっけ…と、回らない頭で思った。

そうしている内に、ついにチョコで出来たトランプタワーが完成した。

ご丁寧に、模様も凹凸で表現されている。

そこでやっと立ち尽くすヒソカに目を向け、にっこりと笑って。

「おかえり、ヒソカ」

何時もよりも楽しそうに、自分を迎えた。



「…ただいま、これは何?」

取り敢えず荷物を置いて、Aの向かいのソファに座る。

「今日はバレンタインだろう?久々にやりたくなってねぇ」

ワインを飲みながら、テーブルに乗せられたそれを指差す。

「これ……チョコ、だよね」

「ご名答。普通に食べられるから、というか食べなよ。折角作ったんだから」

それは、“普通に”販売されている板チョコを溶かした物を、【平凡こそ兵器なり】で操作して作ったのだが…

最も身近な存在なのに能力を知らないヒソカが知る由はない。

ここまで精巧に見事に作られていると、壊す事すら躊躇ってしまう。

手を伸ばそうとしないヒソカに焦れたのか、Aが一番上のトランプチョコを手に取る。

一つ一つ別になっているので、他のチョコがついてくるような事はなかった。

いつまで経っても溶ける気配のないそれを、向かいに座るヒソカの口に突っ込んだ。

「っむぐ!?」

突然の濃い甘味に噎せ返りそうになるが、咳き込む事すら出来ず何とか飲み込んだ。

「どう?甘ったるいだろう?」

悪戯っ子のような幼い笑みを浮かべるA。

やっぱり敵わないな、改めてそう感じた。









「そういえば、他の人には…」

「チ○ルチョコ100詰め送った」

「………」

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