【H×H】「無事にハンターになりましたが、どうやら平和とは程遠いようです」【フェイタン ヒソカ】

６話 ページ8

身なりのいい夫婦から明らかに堅気でない団体様まで、様々な人達が活気にあふれた街並みを闊歩する。真昼間からビールのジョッキが打ち鳴らされるビアガーデンを横目に、高くそびえる塔を仰視した。

「すっごい、人がいっぱいだね。こんなに栄えてるところ初めてかも」

「うるさいだけね。スリやすい以外いいことない」

ミンボ共和国から一日半かけて、私達は天空闘技場を囲む街に到着した。フィンとは空港で別れ、今はフェイと二人きり。

つまりデートである。例えフェイが賑やかな雰囲気に嫌気のさした顔をしていようと、二人並んで歩くだけでデートなのである。異論は認めない。

だが、デートとはお互いが楽しめてこそ。フェイ曰く「廃墟の方が落ち着く」とのことなので、ここら一帯と彼の相性は最悪と言っていいだろう。さらば私のらぶらぶ計画。

早くも苛立ちをにじませるフェイのため、事前に調べておいた宿へと急いだ。

都会とは不思議なもので、大通りを一つそれるだけで途端に喧騒が遠ざかる。ゴミ箱を漁る野良猫やそこら中をうろつくカラスの目を抜けて、表通りが嘘のようにひっそりとした宿を見つけた。

サイトに掲載されていた写真の通り、木造三階建ての地味な建物だ。壁の塗装は剥がれかけで、お世辞にも道すがら見かけて入ろうとは思えない外観をしている。

しかし、事前の調べによれば、この宿屋は私達にとってこの上なくいい環境だ。いざ目の前にするとそれが果たして正しい情報なのか疑ってしまうが、ともかく受付けをすることにした。

扉を開けると、古びた木がドアベルよりも派手に軋んだ。入り口正面にあるカウンターには、新聞を広げたナイスミドルがくわえ煙草で不遜に座っている。

「何だァ、客か？」

「ええ。予約はないですけど、空き部屋は？」

私達の姿を認め、ばさりと新聞を放り出す。中々に渋い声の壮年男性は、仮にも客である私とフェイを値踏みするように上から下まで見回した。

「使える(・・・)奴らか。部屋は別をお望みで？」

「一つで結構。夫婦なもんでね」

「ほう、そいつあ失礼した。何泊する？」

「未定だけど、まあ半年くらい？」

「金は前払い一括だぞ」

「振込でいいんなら、今すぐにでも」

宿屋の主人はメモ帳をちぎり取って口座番号を走り書き、私に突き出した。

一泊一万二千ジェニー×六ヶ月で約二百万。チップとして五十万ほど上乗せして振り込むと、彼はふんと鼻を鳴らして鍵を投げよこした。

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