５話 ページ7
糸を一振りする度に家具が壊れ破片が散乱し、壁すらも脆いクッキーのように瓦礫の山と化していく。水道管が破裂して床は水浸しになり、至る所でばちばちと火花が散る。
床にも天井にも穴が開いた。電球はとうの昔に割れて飛び散り、陽の光を浴びてきらきらと瞬いている。ソファは真ん中からへし折り、部屋の隅に転がした。
「おお〜、すげえな。意外と破壊力あるじゃねーか」
「ま、落ち着いてぶん回せる状態だからこそだけどね」
珍しく素直に感心した様子のフィンが、すっかり荒廃した部屋を眺めながら言った。
現在私達は──というか私だけが、証拠隠滅のために破壊活動に勤しんでいる。使用した痕跡などゴミの山に埋もれてしまうくらい、部屋をボコボコに荒らし回っているのだ。
それに最適なのが私の能力、“
室内をあらかた一望できるベランダを背に立ち、仁王立ちで糸をめちゃくちゃに振り回す。特別頑丈に作られているわけでもない物品の数々は、念能力の前に儚くその形を散らしていった。
正直に言うと、結構楽しい。片付けるのは面倒だけど散らかすのは楽しい感覚と同じだ。別に何かを壊して快感を得ているのではなく、思い切り力を振るえるのが気持ちいいだけ。
「……こんなもん？」
「いんじゃね」
十分ほど破壊の限りを尽くし、完成したのは台風が直撃した後のような惨状。念を知らない警察の目から見れば、人がやったこととは思えないだろう。魔獣か何か、人外の仕業と考えた方が余程納得がいくレベルである。
「フェイ、どうどう？私の能力、結構いいでしょ？」
「避けられたら意味ないね。もと速くできないのか？」
「手厳しい。いやあ、同時に操るのって難しくて……」
ひどい騒音の中で構わず本を読んでいたフェイにも感想を求めると、ちらと一瞥しただけでそっけないダメ出しを食らってしまった。
まあ、旅団の中でも屈指のスピードタイプなフェイから見れば愚鈍もいいところだろう。軽々避けられて本体を殴られる様が容易に想像できる。
本数を少なくしたら多少は速さも増すのだが、今回は広域を対象としたので致し方なし。やるべきことを終え、私達は連れ立って空港に向かった。
向かうは東、天空闘技場。国境を一つ隔てるので少し煩雑な手続きを必要としたが、以前シャルさんに用意してもらった偽造戸籍でどうにかなった。
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てん(プロフ) - 小学生の頃に出会ったこのハルさんの作品が，成人した今でもずっとずっと大好きです。時々ふと思い出しては読みに来て元気をもらっています。作品を残してくださっていること，そして今でもハルさんの作品を読めることが本当にうれしいです！ありがとうございます！！ (11月8日 0時) (
レス) id: 0c5a4c2fdf (このIDを非表示/違反報告)
てんごく(プロフ) - お願いします頑張って下さい もう、文庫化していいのでは? (6月21日 17時) (レス) @page14 id: eef1b4a1e3 (このIDを非表示/違反報告)
みーぱ(プロフ) - 何年も何年も待ってます....... (2022年12月9日 5時) (レス) id: 48f7dcb244 (このIDを非表示/違反報告)
よるくん(プロフ) - 読ませていただきました！フェイタンがカッコ可愛すぎてマジでやばかったです！でも続きが読みたいです！よろしくおねがいします！ (2022年11月1日 11時) (レス) @page14 id: d8ef2564dd (このIDを非表示/違反報告)
あおぞら(｀・ω・´)(プロフ) - 1週間かけてじっくり一から読ませていただきました！ものすごく設定が凝っていて、原作を髣髴とさせる作品でした。1話1話とてもワクワクした気持ちで読めて楽しかったです。ここで終わりなのが惜しいですが夢のような時間をありがとうございました！！ (2022年9月25日 22時) (レス) @page14 id: 11b3922fd9 (このIDを非表示/違反報告)
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