リハビリ短編�� ページ14
第一の理由として、そうやすやすと私の要望を叶えてはくれないだろうという一般的なものがある。フェイは特にこういう普通のカップル的な行為に興味関心がないから当然だ。
第二に──これが大きなウェイトを占めている──私の個人的な悲願。ペアルックはしてほしい。でもその不思議衣装をあっさり着替えてほしくない。
オタク特有の二律背反に悩まされ、葛藤の末、帰宅直後、フィンが見ている真ん前で躊躇なく敢行した初手突発的土下座に逢着した。
痛いくらいの無言が突き刺さる。フィンが可哀想なものを見る目でこちらを見ている。そんな表情初めて見た。流石に居た堪れなくなってきたが、これは私の愛のなせる技。誰にも邪魔はさせない。
「街で見かけたジャケットです。ペアルックがしたくて買ってきました。今日一日一回だけでいいんで着てくれませんか。家の中だけで構わないんで」
謎に敬語を使いながら、私は懇願する。頭上でフェイがどんな顔をしているのか分からないが、気まずい静寂がみしみしとのしかかった。
すっ、と音もなくフェイが動く気配。軽度の暴力覚悟で身を固くすると、がさごそべりべりという音が視界の外で鳴った。
どうやら服の包みを引っぺがしているらしい。次いで衣擦れの音。
「フィン」
「あ？ああ、何だ？」
なおも土下座スタイルを貫く私の上で、不意にフェイが第三者だったフィンに話を振った。彼も自分が巻き込まれるとは思っていなかったのだろう、困惑の声が一声漏れる。どんまい。
「さきテレビで見たハンバーガー、美味そうだたね」
「はぁ？いや、まあ……」
今の混迷極まる状況とは全く関係ない雑談に、視界の隅でフィンが首を傾げているが、私はフェイが何を言わんとするか察した。愛ゆえに、である！
「夕飯は特製ハンバーガーにします」
今しかない、と思って顔を上げると、フェイは私を見下せるのがさぞかし楽しいらしく、いつも以上に嗜虐的な笑みを浮かべながら部屋に戻っていった。
──その手に、私セレクトのお洋服を持って。
小躍りしながら作った(フィンにはやはり可哀想な目で見られた)ハンバーガーを、お店風に真っ赤な紙で包むなどして完成したアメリカンで高カロリーな食卓。
腕まくりをしてハンバーガーを頬張るフェイタン、食べ慣れないハンバーガーのソースがちょっぴり口の端についたフェイタン、一口が思いのほかちっちゃなフェイタンなどを添えて。
ここ数年で最高の夕食だったことを、結論として記しておく。
終わり
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てん(プロフ) - 小学生の頃に出会ったこのハルさんの作品が，成人した今でもずっとずっと大好きです。時々ふと思い出しては読みに来て元気をもらっています。作品を残してくださっていること，そして今でもハルさんの作品を読めることが本当にうれしいです！ありがとうございます！！ (11月8日 0時) (
レス) id: 0c5a4c2fdf (このIDを非表示/違反報告)
てんごく(プロフ) - お願いします頑張って下さい もう、文庫化していいのでは? (6月21日 17時) (レス) @page14 id: eef1b4a1e3 (このIDを非表示/違反報告)
みーぱ(プロフ) - 何年も何年も待ってます....... (2022年12月9日 5時) (レス) id: 48f7dcb244 (このIDを非表示/違反報告)
よるくん(プロフ) - 読ませていただきました！フェイタンがカッコ可愛すぎてマジでやばかったです！でも続きが読みたいです！よろしくおねがいします！ (2022年11月1日 11時) (レス) @page14 id: d8ef2564dd (このIDを非表示/違反報告)
あおぞら(｀・ω・´)(プロフ) - 1週間かけてじっくり一から読ませていただきました！ものすごく設定が凝っていて、原作を髣髴とさせる作品でした。1話1話とてもワクワクした気持ちで読めて楽しかったです。ここで終わりなのが惜しいですが夢のような時間をありがとうございました！！ (2022年9月25日 22時) (レス) @page14 id: 11b3922fd9 (このIDを非表示/違反報告)
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