４１話（9/9） ページ43
正直にそう言うと思い切り頭を殴られた。ちゃんと“纒”を解いてくれた状態ではあるが、戯れではない鈍痛が脳天を襲う。これ、本気で怒ってる時のパンチだ。
「馬鹿だ馬鹿だとは思てたが、やぱり馬鹿ねお前。念の恐ろしさをまるで分かてない。いつか自分に殺されるよ」
愛想を尽かされるかもと身構えたが、一見冷淡な言い方の奥に何となく抑えた気持ちがあるのを感じた。ほとんど直感に近い察知なのだが、恐らくは間違いなく。
もしかして、心配してくれているのだろうか。下手を打てば死ぬかも知れなかった私の無謀さに、呆れながらも案じてくれたのだろうか。
だとしたら。怒られているにも関わらず口元が緩むのが我慢できない。空いている手で顔を隠し、必死で表情筋を引き締めた。
「軽薄なことしてごめんなさい。でも、フェイが読みたがってたから、何とかしてあげたくて……自分勝手だけど、何か助けになりたくて、つい」
これは本心だ。責任を押し付けるような物言いになってしまうけれど、フェイのためになることがしたかった。ただそれだけなのだ。
現状に陥ったのはこれしか考えていなかったせいである。フェイのこととなると浅慮になってしまう悪い癖が、いつまで経っても治らない。
修行時代もそれで何度か無茶をしたのを思い出したのか、フェイはしばらく私を睨みつけ、それからわざとらしいため息をついた。舌打ちのおまけ付きで。
「体に異常は？」
「“絶”以外ありません」
「制約は？」
「衝動的にやったから、考えてなかった……」
「馬鹿が。フィン、こいつ戻るまでお前が料理番しろ」
「あぁ！？面倒くせえ、俺はやんねーぞ！」
フィンに顎で指図して、私の隣に乱暴に腰掛けた。「やらねーからな！」と念を押すフィンをガン無視してテレビの電源を落とし、もう一度本を持った私の手を取る。
「本のオーラが少なく……喰われてる、てお前なら言うか？確かに、除念できてるよ」
「本当！？じゃあ……！」
「油断するな馬鹿。ノーリスクの除念、あり得ないよ。これだけで終わると思うか？」
「う……思えないです……」
いかんせん“凝”も何も使えないので自分では分からないのだが、確実に私が思い描いていた除念が進んでいるらしい。喜びかけた私を、フェイがひと睨みで諌める。
こればかりは全面的に私が悪いので何も言えず、萎れてうな垂れた頭をぎこちなく撫でられた。それに喜びかけて、またぐーで殴られた。プラマイはプラスだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1094人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ハル(プロフ) - 向日葵さん» ご無事で何よりです…！それはありがとうございます(笑)幸い軽微な被害で済みましたので、すっかり元気に続いています！余震はまだ少し怖いですけれど、元気にやって参りましょう！ (2018年9月15日 13時) (
レス) id: a73d01fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - エルさん» 同郷の方！ご無事で何よりです！本当に、復旧にあたって下さった方々には頭が上がりませんね…H×Hが完結するまでは何としてでも生きてやりますよ！ (2018年9月15日 13時) (レス) id: a73d01fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ネフェルティティさん» そちらでも台風などで非常に大きな被害が出たとお聞きしております。地震に台風にと最近災害が一際目立っておりますが、どうかお元気で、ご無事でいらっしゃることを心より願っております。温かいお言葉をありがとうございます！頑張りましょう！ (2018年9月15日 13時) (レス) id: a73d01fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - シユウさん» ありがとうございます！何年もお付き合い頂き感無量でございます…！お願い死なないでシユウさん！ (2018年9月15日 13時) (レス) id: a73d01fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - みーたんさん» ありがとうございます！まだまだ頑張って行く予定です！ (2018年9月15日 13時) (レス) id: a73d01fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
