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「さて……悪いが、やの字。君には選んで貰わにゃならん。今ここで首を飛ばされるか、大人しく退くかを」
「……どちらも」
「断れると思ってんのかな？ 言っとくけど、予備動作なしで君の頭と体をお別れさせることくらいわけないんだぜ」
ああ嫌だ、死にかけのくせにもがく強情者はこれだから困る。さっさと命大事に遁走すりゃあいいものを。ゴン君もこれに通ずる所があるから、極力敵にはなりたくないんだよね。
しばし私を瞼越しに下から睨み上げていたヤギュウは、ぐっと屈辱を噛み締め、通れ、と低く唸った。
「どーも。ったく、余計な時間食った……あ、ねえ、近道とか知らない？ 一応試験官でしょ？」
「……知らぬ。私はここで、」
「あっそ。じゃあもう用はないさね」
最後までキャラクターを崩してはいけない。徹底して癪に触る装いを演じて、立ち上がる気概も粉微塵に潰す必要がある。
半分くらいは本心に基づく態度だけれど、そこは言わないお約束だ。全く、これで何分の無駄を頂いたことか。
手錠の拘束も一切気にならないレベルで楽な仕事ではあったが、強いて言うなら鎖で刀身を受け止めるアクションが出来なかったのは惜しかった。ああいう格好いい戦闘には憧れる。
倒れ伏したまま拳を握り締めるヤギュウの横をすり抜け、彼の背後にあった扉に悠々と歩を進める。──瞬間、膨れ上がった殺気は、とても無視できるものではなかった。
振り向きざま咄嗟に“堅”をし、今しがた考えていたばかりの動作を実践すべく、普通ならここに剣筋が向かうであろう箇所に鎖を掲げる。
「──閃ッ！！」
想定していた射程の中に、彼はいなかった。歩数にして十歩程度離れた距離で、刀を振り抜いたらしい姿勢のヤギュウがいる。一体何をと思考が巡るよりも早く鎖が砕け、腹部に切っ先が掠めたような衝撃が襲った。
「ぅ、おお……さ、流石に今のはビビった」
見れば服が真一文字に裂け、腹に赤い筋が一本刻まれている。薄皮を刻むにすら届かない威力ではあったが、最後っ屁にしては中々のものだ。
「これすら……お主には、届かぬか」
ふ、と悟ったような笑みを一つ零して、ヤギュウは今度こそばったりと倒れた。斬撃を飛ばす能力だろうか、これを初手でかまされていたらちょっと厄介だったかも知れない。
所詮は敗者の悪あがき、と一笑に付すには勿体ない根性を見せてもらった。ついでに鎖も壊してくれたし、彼には感謝せねばなるまい。
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ココ - 受験が終わってひと段落したのでこの作品のことを思い出し、ここを訪れました。本当に好きな作品で、受験前も新しいお話が追加されるのを楽しみにしながら読んでいたのを思い出しています。書き続けてくださって本当にありがとうございます。心から応援しています！！ (2019年5月27日 23時) (
レス) id: 57a3ca09f7 (このIDを非表示/違反報告)
こどくなおうじ。(テルス)(プロフ) - この作品のことが忘れられず1年ぶりに検索してみたらまだシリーズが続いていて驚きました！とても好きな作品だったので嬉しいです。応援しています！頑張ってください！！ (2018年8月19日 1時) (レス) id: 789d697893 (このIDを非表示/違反報告)
忍乃埼(プロフ) - いつも楽しく主人公の苦労を読んでおります！個人的には1日更新の方が長く楽しんで読めるのでそちらの方がいいです！更新頑張ってください！ (2018年8月15日 19時) (レス) id: 034c8c0db3 (このIDを非表示/違反報告)
エル - 1日毎だと楽しみが増えますし個人的には嬉しいです！！ (2018年8月15日 10時) (レス) id: c9241f0a8d (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - １日毎だと読みやすくて嬉しいです！ (2018年8月15日 10時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
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