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「さて、こちらに取り出しますは、スプレーとライター」
「……即席の火炎放射器でもする心算か？ しかし、その程度の射程では何の意味もなさんぞ」
「だと思う？ それね、大間違いなのだわさ」
缶とライターを片手に纏めて持ち、鞄からもう一つだけものを引き出し、高く上に跳ぶ。蝋燭にはかからないよう、ヤギュウの少し背後に位置どり、上空からあるものをぶちまけた。
「っ！？ これは……！」
特有の鼻をつく臭いに、ヤギュウも気が付いたらしい。──この状況でかけられる、アルコールの危険度に。
「ただの消毒用だけどさ、案外しっかり燃えるもんよ？ ……で、なァにが意味をなさないって？ 仰ったのかな？」
「……卑劣な……」
「そういう言葉は誰一人傷付けてない業物持って言いな。丸腰の女子相手に武器振りかざす、さっきまでの自分に対する言葉なら別だがね」
冷静さを失った方が負けだ。煽って煽って腹立つ態度を心がけて、いざ尋常に勝負とばかりに両手で缶とライターを構える。
「逃げたかったら逃げなよ、お好きにどうぞ。どっちにしろ、相応に無様な姿が見られるだろうがな！」
あえてゆっくりと歩み寄り、彼の有効射程範囲のギリギリ外で立ち止まる。フィン直伝の苛立ち募るにやにや笑いでヤギュウを見つめれば、奴は分かりやすく歯を噛み締めた。雰囲気で分かるらしい。
しゅう、とスプレーだけを噴射すると、ヤギュウの肩がぴくりと反応する。ふむ、炎に対する防御は持ち合わせていないと見てもよさそうだ。結構結構。
安物のライターに火を付け、スプレーの噴射口の合わせる。
「生焼け侍なんざ、犬も食わねえな」
私の指が噴射を行おうとした瞬間、ヤギュウの腕が大きくしなった。袈裟斬りに私を始末しようとする剣筋を読みきって避け、大振りに隙ができた腹に強化済みの蹴りを叩き込む。
吹き飛ぶことなく全身で衝撃を受け止めたヤギュウの口から血が舞った。ここまで余裕があれば、もう小細工はなしにして十分。火炎放射器セットを後ろに放り投げ、追撃すべく床を蹴る。
「う、おぉお！！」
確実に内臓の一つや二つはイかれたろうに、彼の闘志は潰えなかった。横薙ぎの刀は、しかしそんな意気込みを叶えることなく弱々しい。
簡単に蹴り上げて手から柄が離れれば、もうこの男の勝機なぞゼロに等しい。床にくずおれた彼の顎を爪先ですくい、はん、と鼻で笑ってみせた。
「だから言ったろうがよ、結果は同じだって」
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ココ - 受験が終わってひと段落したのでこの作品のことを思い出し、ここを訪れました。本当に好きな作品で、受験前も新しいお話が追加されるのを楽しみにしながら読んでいたのを思い出しています。書き続けてくださって本当にありがとうございます。心から応援しています！！ (2019年5月27日 23時) (
レス) id: 57a3ca09f7 (このIDを非表示/違反報告)
こどくなおうじ。(テルス)(プロフ) - この作品のことが忘れられず1年ぶりに検索してみたらまだシリーズが続いていて驚きました！とても好きな作品だったので嬉しいです。応援しています！頑張ってください！！ (2018年8月19日 1時) (レス) id: 789d697893 (このIDを非表示/違反報告)
忍乃埼(プロフ) - いつも楽しく主人公の苦労を読んでおります！個人的には1日更新の方が長く楽しんで読めるのでそちらの方がいいです！更新頑張ってください！ (2018年8月15日 19時) (レス) id: 034c8c0db3 (このIDを非表示/違反報告)
エル - 1日毎だと楽しみが増えますし個人的には嬉しいです！！ (2018年8月15日 10時) (レス) id: c9241f0a8d (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - １日毎だと読みやすくて嬉しいです！ (2018年8月15日 10時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
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