検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:51,592 hit

56話 ページ21

「この好きは松陽と同じなのだろうか」
そう悲しそうにでも少し苦しそうに微笑うAの姿に、気がついたら強く抱きしめていた。
やっと、やっとだ。やっと自覚してくれた。私の苦しさを理解してくれた。本当の意味で私のものになってくれた。伝わってくる心臓の鼓動は私と同じで、どうしょうもなく嬉しくなる。これで正式にこの細い体を抱きしめることができるのだ。
あの時の幼かった日々に得た感情を手放さないでよかった。心からそう思える瞬間だった。あの日感じた愛情も、あの時湧き出た独占欲も嫉妬も、今、Aと共有している。あぁ嬉しくて離したくない。このままでいたいな。

長年の想いが実って安堵すれば、今度は違う欲が出てくる。こんなにも欲深かったのか私は。手も繋いだ、抱きしめた、次はキスだろうか。
「キスしたい」
そうお願いするが、案の定Aは首を傾げる。キスなんて西洋の言葉知らないと思ってはいた。きっと「鱚」を思い浮かべるんだろうな、と先手を打って否定すれば顔を顰めた。そんなところも可愛くて好きだ。
私は正面からAを見つめる。不安なのか上目遣いでこちらを見つめるAにくらりとしそうだ。私は安心させるように手を繋いで頬を撫でてあげる。目を瞑るように言って、そのままキスを落とした。本当はもっとしたがったが、驚いた表情のAを見て理性を総出動させ唇を離した。
「…これがキス、恋人とする行為ですよ。口吸いや接吻なら聞いたことがあるのではないですか?」
私がそう言えば、Aはしばらくフリーズしていた。きっと頭の引き出しを全部開けて探しているのだろう。少し待てば、徐々に顔を赤くして目を回して倒れたではないか。
「A!?大丈夫ですか!?私のせい…?熱っ!し、しっかり!」
恋愛初心者のAにはまだ早かったかもしれない。少しの反省はあったが後悔はしていない。不安が全部吹き飛んだように幸せなのだから。
しかし、Aが起きてから目を合わせてくれないのは不満である。一定の距離を保たれている。顔を紅に染めている姿は可愛らしくてとてもいいが、露骨に避けられると私も悲しい。
「なんで避けるんですか!これからキス沢山するんですから慣れてくださいよ!」
「でけぇ声で言うな馬鹿者!近寄るな僕の心臓が爆発する!」
「耐性つけますよ!ほらおいで!」
「行くか馬鹿!」
「(先生達いつの間にそこまで…)」
「(こんな所で破廉恥な…!)」
「(はい俺の片想い本格的に終了ぉーっと)」

57話→←55話


  • 金 運: ★☆☆☆☆
  • 恋愛運: ★★★☆☆
  • 健康運: ★★★★★
  • 全体運: ★★★☆☆

ラッキーアルファベット

X


目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (57 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
51人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 松下村塾 , 松陽
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:月光 | 作成日時:2018年8月4日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。