180話・ ページ2
Aside〜
日輪に僕に“会いたい”って言っている人がいると言われ、御座敷に連れて行かれる。…御丁寧に布団まで敷いてある。はて、吉原に知り合いなんて居たかと記憶を漁るが特に心当たりはなかった。部屋の中で待機していると、複数の足音と着物を擦る音が聞こえた。いよいよご対面か、そう思い音の方に注目する。暫くすると齢七ほどの子供の声が聞こえた。禿と呼ばれる子供だろう
「太夫のおこしでありんす」
襖がゆっくりと開き、僕に会いたがっていた娘の正体が明らかになった
月姫「
少し不安そうに揺れる瞳は綺麗な琥珀色だった。黒い髪に浮かぶ琥珀色の瞳はまるで満月のよう。嗚呼僕は此の光景、見覚えがあるぞ
A『勿論。攘夷戦争真っ只中に遊里に遊びに行った時に会ったよな。月姫?相も変わらず綺麗だ』
僕がそう言うと、嬉しそうに顔を綻ばせて次第に大きな瞳は涙ぐみだした
A『え、ちょ、何で泣いて…?僕が泣かせたみたいじゃないかァ……』
床に置いてあったティッシュを月姫に渡す
A『あーあ、折角僕の為にめかし込んで来てくれたのに泣くから……』
綺麗な化粧が少し崩れる。……僕の為であってるよな?僕が自意識過剰な訳ではないよな??
月姫「……嬉しくて。わっち、えらい嬉しかったんでありんす。わっちを憶えていてくださって、貴方様のような方に憶えていてもらえるなんて、夢のようでありんす。わっち、片時も貴方様が忘れられなくて、もう一度お会いしたくて、色々な人騙して、太夫まで登って、貴方様に見てもらえるように色々な事して、綺麗なんかでは無いのに、貴方様は変わらず綺麗な笑顔でわっちを見てくださって…。嬉しい反面、申し訳ないのでありんす……っ」
華やかな着物の裾を目元に持ってゆき、涙を拭く月姫は酷く美しく、酷く不安定だった
色々な人騙すも何もそう云う場所だから気にしないで良いと思っているんだけどな。だって遊里とは”一夜限りの恋人
A『太夫まで登るなんてすごいじゃないか、僕の為に頑張ってくれていたのに見つけるのが遅くなってゴメンな』
止まることを知らない涙は裾を濡らすばかりだ。如何したら泣き止んでくれるのか。僕は頭を掻き月姫を窓の方まで引っ張った
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作者名:月光 | 作成日時:2020年8月17日 21時