26話 ページ27
2人で彼のごとく手を繋ぎながら山を散策する。若干息の上がるぼくと、涼しい顔をした松陽。「足元滑りますよ」や「岩に気をつけてくださいね」など、ぼくを気遣って声をかけてくれるこいつは底なしに優しい。
ついでにと目についた果物を手に取りながら山を歩いていると、少し前を歩きぼくを引っ張ってくれていた松陽が突然止まる。急な出来事だったため、背中に追突して鼻を擦るぼくは松陽に言う。
「急に止まるな馬鹿者。危ないだろ」
「あ、ごめんなさい。探しものが見つかり、つい」
目線を追うとそこには古びた看板が立っており、木は所々が腐り崩れている。微かに炭で書かれた文字が見えぼく達はそれに向かった。泥を落としてよく見てみると文字のようなものが確かに書かれている。ぼくは文字は少ししか理解できない。助けを求めるように松陽を見れば、読めたのか嬉しそうに笑っている。
「読めたのか?教えてくれ」
「えぇ勿論。この地は『吉田』というらしいですね漢字はこうですよ」
看板の字は掠れて読めなかったため、松陽が土の上に書いてくれる。
「吉田、ぼく達の名字は吉田。吉田Aと吉田松陽………ははっ同じだぞ、なんだか嬉しいな!」
なぁ?と同調を求めるように松陽の方を見ればだんまりを決め込んでいる。
「松陽?嬉しくない?」
「嬉しいですよぉ……。でも口に出さないで…私、羞恥で死んでしまいそうですからぁ……」
何を言っているのか理解できなかったが、とりあえず頭を撫でておいた。そしたら顔を覆いだした。
山を降りる途中、ぼくは思い出したように「あぁ」と呟いた。少し前を歩いていた松陽は首を傾げる。不思議そうなやつにぼくは手を差し出した。
「なぁ松陽、刀あるか?小刀でもいいぞ」
「ありますが、何に使うんです?」
「いいから、貸してくれ」
首を傾げながらも貸してくれた小刀。松陽は何に使うかわからないという顔をしていた。ぼくは刀を首の近くに構え、そのまま横に滑らした。長かった髪はパラパラと下に落ちてゆく。ちょうど切りたかった。邪魔だったし長い生の区切りとして。
軽くなったと喜ぶぼくに松陽はため息をついた。
「焦りました…死のうとしたのかと思いましたよ」
「死のうとなんかするかよ。せっかくお前と出会えたんだ。んなことは絶対ないから安心しろ」
「それが俗に言うイケメン…」
いけめん?と繰り返すと松陽は「なんでもありませんよ」と言ってぼくの手を引いた。たまに松陽は不思議なことを言う。
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作者名:月光 | 作成日時:2018年6月2日 16時