鬼の姫君が蝙蝠達を救済する話～序章参～ (ページ26)

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人の子ページ26

蛟side

自分を強がりをしているだけの子供だ､と言った時､急にその人が小さく見えた｡

(ああ､そうか｡)

強い意志とを持って､しかし依然不安を浮かべる色違いの双眸を見詰め返す｡

(この人は､人の子だ｡)

あの日､長らく住み着いていた山にこの人の子達がやって来た｡

曰く､ここは陰陽師の土地で､自分達が行う儀式の邪魔になるから速やかに立ち退いて欲しいと｡

若輩の半妖風情が､と正直に思った｡

仮にも元土地神…神落ちとしての矜恃があったから｡

ところが蓋を開けてみれば血筋や妖力の質で劣っているのは自分の方｡

眩い程純粋な力にあっさりと押し負けた｡

“貴「…ごめんなさい｡」”

その時の悲しそうな表情が嫌に気になった｡

貴女がしたのは当然の事だろうに､と｡

結局その場を離れた後も忘れられなくて､遂には戻ってしまった｡

そこで倒れているこの人達を見て､柄にもなく焦って｡

二人の目が覚めるまで自分の柔い身体を枕にしてやるなど酔狂な事をして｡

―――それは､何故？

(…そうだ｡)

仕えると言い出したのは決して力への羨望や尊敬だけではないのだ｡

無防備に寝顔を晒す子供らを｡

罪悪感に顔を歪める小さい半妖を｡

目的の為に眼前の敵に立ち向かう人の子達を｡

褒められて素直に赤面する可愛らしい女童を｡

(守りたい､と思ったんだ…今度こそ｡)

あの時は､守れなかった｡

でも､もしもう一度だけ､何かを庇護出来る存在になれるなら｡

…なりたいと､思ってしまった｡

(なら､迷うまでもないだろう｡)

多くの妖を率いながらも､自分の無力を嘆き続けるこの小さな半妖は｡

紛れもなく守るべき”人の子”で､

支えたいと思える”主”だ｡