鬼の姫君が蝙蝠達を救済する話～序章参～ (ページ21)

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参ページ21

貴女side

側仕えは一門の出自では無い｡

その言葉に流石に周囲のざわめきが戻る｡
もじもじとしている蛟の額をしゃんとしろ､という意味を込めて指の腹で小突く｡

貴「妾が手ずから引き抜いた優秀な側仕えだ｡

問題はあるまい？」

『っ､しかし､
側仕えは一門から輩出するのが伝統でございましょう！』

貴「そのような決まり事はない｡

先代達の求める才をもつ者が偶然この一門に居ただけのこと｡

父上やその他の祖先と妾の価値観は別物だ｡」

そう言葉にした時､問答をしていた妖(化け狸)の口から嘲笑が漏れた｡

『先代方と価値観が違う…？
そうでしょうとも､ええ｡

なにせ貴女は陰陽師に肩入れするような”半妖”だ！

生粋の妖の美徳など分かるはずもありませんでしたねぇ？』

声を荒らげる狸に沈まる会場｡

貴「…」

まあ､母方にも父方にもこんな考えを持つ輩は少なからずいる｡
今更どうとも思わないが｡

不意に､視界の端を白いものが掠める｡

「______今の言葉､我が主への侮辱と聞き届けた｡

取り消してもらおうか､狸｡」

『な､ぉ…まぇは…』

「しがない神落ちだよ｡」

再び人型に成った蛟が､恐ろしい程奇麗な笑顔で化け狸の首を掴み上げる｡

貴「…やめなさい､蛟｡

そのひとも先代達からの大切な預かりものだ｡」

蛟「は､出過ぎた真似を致しました｡」

静かな声で諌めると､蛟は化け狸を放り膝をついて大人しく頭を垂れる｡

____な､蛟とはまさか…

____”あの”蛇竜山を根城にしていたという荒神か…？

蛟「っ…」

俯いて唇を噛みしめる蛟｡

自分の村を滅ぼした”神”と同じ扱いはさぞ耐え難いものだろう｡

幽は巴の刻まれた手で蛟を示した｡

貴「紹介しよう､今日より側仕えとなる巴三つの”神落ち”､蛟だ｡

当初は敵意をもち合う関係だったが､最終的に側仕えを志願してきた｡

神の座から零落したとはいえ､妾より遥かに優秀な妖だ｡
妾は今の蛟の忠誠心や実力に不安など微塵も感じていない｡」

だから説教も諌言も不要だ､と遠回しに言う｡

蛟は少し安堵したような表情を浮かべると､深く頭を下げた｡

蛟「勿体なきお言葉｡」

蛟の感謝を聞き届けて､妾は改めて妖達に視線を向ける｡