鬼の姫君が蝙蝠達を救済する話～序章参～ (ページ20)

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弐ページ20

貴女side

貴「この総会で主な話の基盤となるのはこれから言う三つの事だ｡」

一つ､と人差し指を立てる｡

貴「母の生家である黒蝶の当主を継ぐことになった｡
多少の制約付きではあるがな｡」

会場がざわつく｡

貴「静かに｡」

元の静けさに戻る｡

貴「よし｡」

うん､と頷いて二つ､と中指も立てる｡

貴「それにあたり､外つ国…英国(イギリス)へ留学する事になった｡」

今度はあちこちから何かを落としたりする音が聞こえた｡
特に賓客席の最上段からは､がたっと椅子が倒れる音がしたり｡

貴「…(そう言えば紫檀叔父様に報告するのを忘れてたな｡)」

視線だけそちらに向けると､この世の終わりの様な絶望の表情をうかべた叔父様がこちらを見ていた｡

ついでにその膝に座っている従妹の葵も(葵はまだ三歳だ)｡

ひくり､と頬が引き攣る｡

貴「(君､留学の意味わかるのか…？
…英才教育って怖いな｡)」

ぶるり､と身震いして三つ､と薬指を立てる｡

貴「今夜､妾の側仕えを命名する｡」

ついには悲鳴があがった｡
大体分かる､自分の子女を側仕えにと企んでいた連中だろう｡

連中の殆どは微妙に出世し損ねた古参である｡
正直本っ当にめんどくさい｡

そらみろ､君等のせいで蛟が居心地悪そうにそわそわしているじゃないか｡

『十六夜姫…！』

会場の何処かで声があがる｡
これには流石に眉を顰めた｡

貴「…幼名で呼ぶとはな｡

そこまで君と親しくなった覚えはないが？」

ぞわり

先程よりもはるかに重い圧｡
薄ら寒い笑顔と少し殺気が籠った眼｡

『も､申し訳ありません姫様…で､ですが！』

鈍いのか度胸があるのか､中年男性に化けた妖はしつこく食い下がる｡

『我々は命名される側仕えについて一切感知しておりません！

一門に従う者ならば然るべき手順を踏んで情報を開示すべきです！』

貴「…ああ､その事だが｡」

そこで切り､会場に向き直って声を大きくする｡

貴「皆にも伝えておこう､妾が選んだのはこの一門の者ではない。」