56.遠い記憶 ページ8
〜十年前〜
NoSide
或る日
頭の良く回る少年は、此処数日の家の空気に違和感を感じていた。そしてまた、決定的におかしな状況にも、ある程度の仮説を立てていた。
「お母様、Aは?」
「具合が悪くなってしまったから、お医者様に診て貰っているのよ。」
父の出張に付いて行かされたはずの妹が帰って来ない。勿論、父が帰宅しているのに、だ。
そして薄々勘付いていた。
あの両親は、異能を持たぬ妹を、此の家に相応しくないと捨ててしまったのではないか、と。
其の夜。
少年は、たった一人、兄妹の事を親身に面倒を見てくれていた使用人の元を訪ねた。
「坊っちゃま、此のような時間に如何なさいましたか?早くお休みになら無いと、「正直に答えて。」
「?」
「Aは何処?」
「ご入院中だと、奥様も仰っていたでしょう。」
「Aは別に弱く無いし、出る前も健康そのものだった。幾ら何でも急過ぎるよ。………棄てたんでしょう。出張先で。二度と戻って来られないように。此の家は代々強力な異能者を輩出している名家だものね。」
使用人は息を飲んだ。
少年の家は、強い異能を持つ者を数多く輩出し、かの異能特務課上層部の一部とも密接な関係を持つらしい。
「………旦那様と奥様は、異能の強さに執着し過ぎておられます。」
「否定しないんだね。」
「其れは、」
「別に止めなかった事を責めてはいないよ。誰が何を云ったって、どうせ彼等は考えを改めるなんてしないからね。」
少年は、年の割に妙に達観した所があった。そして、人を信じては居なかった。かといって、家族の事が嫌いなわけでも無かった。何不自由無い暮らしで、良い家庭だと思っていた。
両親の、裏の顔を見るまでは。
思えば此の時から、彼の人間不信は始まっていた。
「坊っちゃま、何処へ「出てく。」
「な、何を云っているのですかっ!」
「本気だよ。あんな夫婦の子どもなんて真っ平御免だ。外でのたれ死んだ方がまだマシだね。」
「坊っちゃま!」
「じゃあね。」
追いかけようとする使用人をまき、最低限の荷物を持って外へ出る。
3月といえど、雪国の春はまだ遠い。夜は冷え込むため、尚更だ。
然し少年には、引き返す気は微塵も無い。
「出張先は確か………ヨコハマ、か。」
行き先を定めた少年は、一歩を踏み出した。
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あぽー - コメントありがとうございます!最近ちょっと停滞してて…すみません……… (2017年12月19日 18時) (レス) id: d7427a48c9 (このIDを非表示/違反報告)
雪影(プロフ) - すごく面白いです!!更新楽しみにしてます!これからも頑張ってください!!!応援してます!! (2017年12月18日 18時) (レス) id: ef1099cfc1 (このIDを非表示/違反報告)
あぽー - 椎名唯乃さん» ありがとうございます!ぼちぼちですが更新していくので、今後とも是非ご贔屓に( ´∀`) (2017年12月16日 0時) (レス) id: d7427a48c9 (このIDを非表示/違反報告)
椎名唯乃(プロフ) - とても面白いです!更新楽しみにしています!頑張ってください! (2017年12月15日 22時) (レス) id: 490a476d52 (このIDを非表示/違反報告)
あぽー - ぶっちゃけ、アニメ本編10話のアレが有りなら何でもアリなような気が…します。 (2017年12月11日 19時) (レス) id: d7427a48c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あぽー | 作成日時:2017年11月18日 1時