96 熱中症 ページ46
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ーーーーーーーー「…いと、海翔! 」
…ん、この声……。
重い瞼を押し開けた先には、
不安な様子で覗き込む、"誰か" がいた。
霞んでいて、
はっきりとは見えないから、
誰なのかは分からない。
「海翔! 大丈夫? 僕だよ? 麗! 」
れい…。あー、麗ちゃんか。
にしても、ここは…。
そう思いながら、周りを見渡した。
周囲は白一色に染められ、
鼻をつんと通るような、薬 …?
そんな感じの匂いがする。
「なんか、ボーッとしちゃってるけど、
大丈夫なの? 頭打っちゃったの? 」
震えた声。
ポタッと冷たい雫が頬に落ちた。
…え。な、泣いてるの?
私、全然健全だけども?!
「麗ちゃん? なんで泣いてるの?」
「海翔…っ! 良かったぁ…。
僕のこと、忘れちゃったかと思って、
心配っ、したんだよ…」
「麗ちゃん…。忘れてなんかないよ。
ごめんね、心配させてごめんね…」
本当にごめんね…。
心配してくれて、ありがとね…。
麗ちゃんは小刻みに震えたまま、
それから何も言わなかった。
……しばらく沈黙の時間が続くと、
麗ちゃんも落ち着きを取り戻していた。
ーーがららら。
そんな時、静かに病室の扉が開いた。
そこにある人の面影。
「お母さん…! 」
麗ちゃんは小さく声を上げた。
あー…。
迷惑かけちゃったなぁ…。
麗ちゃんのお母さんまで……。
お母さんは、静かに扉を閉めると、
私のベットのほうへと歩み寄った。
私が体を起こしているのに
気づいたようで。
「海翔くん、目、覚めたのね」
良かったわ…、と安堵した表情を浮かべた。
まるで、自分の子どもかのように、
私を大切にしてくれる。
…あー、目頭が熱い。
「ねえ、海翔大丈夫なの? 」
お母さんの顔色を伺ってから、
麗ちゃんは訪ねた。
「えぇ。熱中症だったみたい」
そっか、熱中症か。
あんまり重症じゃなくてよかったぁ…。
でも、麗ちゃんたちに迷惑
かけちゃったことには変わりないよね。
「良かったぁ…。じゃなくて!
疲れたらちゃんと言って、って
言ったじゃん! 海翔、すぐ無理するから…」
「ごめんね、本当にごめんなさい…」
皆にはあんまり心配されたくない。
実際、私こんなにも健全なわけだし。
うーんと、
よしっ…!
「麗ちゃん、ちょっといいかな? 」
「え? …うん」
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流華 - ネクロさん» 感想ありがとうございます!!久々にうらつくを開いたらコメントあって嬉しいです涙 (2021年6月27日 20時) (レス) id: c141522df8 (このIDを非表示/違反報告)
ネクロ - 今1を読み終わった所です!2が楽しみなので、早速読んできます! (2021年1月2日 20時) (レス) id: acc1702ca8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 x他1人 | 作成日時:2014年3月23日 22時