65 過去に負った傷 ページ15
とは言っても、私が一方的に喋っているだけで。
『でねー、私、頭ぶつけちゃって……』
『……』
無視。無視。無視。
こんな毎日を送っていた。
けど、諦めなかったのは、いつか、笑ってくれる。
いつか、くだらないこと喋って、笑いあえる!
――そんな希望を胸に抱いていたから。
それとともに、ずっと柊太の傍にいた私も、
徐々に相手にされなくなっていた。
けど、悲しくなかったんだ。
…全く、と言ったら嘘になるかもしれないけど。
『…っ』
『…柊太君。一人で抱えなくても……。相談していいんだよ?
先生にでも、家族にでも』
『……いねぇんだよ』
小さく、か細い。
けれど、どこか鋭い、そんな声質で言い放った。
思いもしなかった返答で、私は戸惑いを隠せなかったけど、
すぐに落ち着いた。
だって、それとともに、より、柊太の強さを思い知らされたから。
それに、私と、どことなく似ていたから。
『俺には、家族なんていねぇんだよ……』
『…あの、さ。それ、私も一緒だよ』
『…え? 』
『私も、気づいたら、いなかったんだよね…お母さんたち……』
柊太は、この時初めて私の目を見てくれた。
一瞬で、ほんとに一瞬で、すぐに逸らしちゃったけど。
『だから、って言うのも可笑しいんだけど、良かったら……
私、相談に乗るよ! 』
その時、確かに見えたんだ。
黒ずんだ瞳の奥が、微かに澄んで、
そこから流れる涙の粒が……。
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流華 - ネクロさん» 感想ありがとうございます!!久々にうらつくを開いたらコメントあって嬉しいです涙 (2021年6月27日 20時) (レス) id: c141522df8 (このIDを非表示/違反報告)
ネクロ - 今1を読み終わった所です!2が楽しみなので、早速読んできます! (2021年1月2日 20時) (レス) id: acc1702ca8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 x他1人 | 作成日時:2014年3月23日 22時