検索窓
今日:1 hit、昨日:20 hit、合計:28,597 hit

65 過去に負った傷 ページ15

とは言っても、私が一方的に喋っているだけで。


『でねー、私、頭ぶつけちゃって……』

『……』


 無視。無視。無視。

こんな毎日を送っていた。

けど、諦めなかったのは、いつか、笑ってくれる。

いつか、くだらないこと喋って、笑いあえる!

――そんな希望を胸に抱いていたから。


 それとともに、ずっと柊太の傍にいた私も、

徐々に相手にされなくなっていた。

けど、悲しくなかったんだ。

…全く、と言ったら嘘になるかもしれないけど。


『…っ』

『…柊太君。一人で抱えなくても……。相談していいんだよ?

 先生にでも、家族にでも』


『……いねぇんだよ』


 小さく、か細い。

けれど、どこか鋭い、そんな声質で言い放った。

 思いもしなかった返答で、私は戸惑いを隠せなかったけど、

すぐに落ち着いた。

だって、それとともに、より、柊太の強さを思い知らされたから。

それに、私と、どことなく似ていたから。


『俺には、家族なんていねぇんだよ……』

『…あの、さ。それ、私も一緒だよ』

『…え? 』

『私も、気づいたら、いなかったんだよね…お母さんたち……』


 柊太は、この時初めて私の目を見てくれた。

一瞬で、ほんとに一瞬で、すぐに逸らしちゃったけど。


『だから、って言うのも可笑しいんだけど、良かったら……

 私、相談に乗るよ! 』


 その時、確かに見えたんだ。

黒ずんだ瞳の奥が、微かに澄んで、

そこから流れる涙の粒が……。

66 そして知ったこと→←64 そこまで?



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (13 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
11人がお気に入り
設定タグ:男装女子 , ギャグ , 友情・恋愛 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

流華 - ネクロさん» 感想ありがとうございます!!久々にうらつくを開いたらコメントあって嬉しいです涙 (2021年6月27日 20時) (レス) id: c141522df8 (このIDを非表示/違反報告)
ネクロ - 今1を読み終わった所です!2が楽しみなので、早速読んできます! (2021年1月2日 20時) (レス) id: acc1702ca8 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:作者 x他1人 | 作成日時:2014年3月23日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。