61 夢の中の君 ページ11
『…俺、多分お前の近くに居ちゃいけないと思う』
え? 何言ってるの?
そう言いたいのに、声が出ない。
体も動かなくて、近くにも行けない。
『俺さ、昔から不吉な奴って言われてきたから。
近くにいる人たちは、いつも不幸な目にあって来たんだ』
何、言ってるの?
顔がぼやけていて、よく見えないけど、多分、雰囲気、口調からしたら……。
『だから俺。アイドルやめるかも。
お前等の事、俺のせいで不幸になんてしたくないから。
お前は知ってるだろ? 俺が高校の時お前に全部相談した。
だから、俺の気持ちが分かるだろ? 』
待って。
待ってよ。
私、私は、彼方の近くにいたって、一度も、
…一度たりとも不幸だなんて思ったことないんだよ?
むしろ、楽しかったし、幸せだったんだよ?
ねぇ、なんでそんなこと言うの?
なんで今頃そんなことを言うの?
私、不幸なんかじゃないから、ずっと一緒に居よう、って……。
そう、言ったじゃん……。
それで、うんって頷いてくれたじゃん……。
『じゃあ、頑張れよ! 俺は、どっかで見守ってるから』
待って…。
待っててば!
「行かないで! 」
やっと体が動いた。
…けれど、視界に映るのは、いつもの殺風景な部屋。
チクタクと、時計の音が静かに響く。
それが、物凄く不気味に感じた。
……さっきのは、夢、だったの?
なんだか、嫌に現実味が帯びていて、怖くてならない。
息も上がって、肩が上下に動いている。
「嫌な、夢……――っ! 」
ハッとし、私は部屋を見渡した。
そして、向かい側のベッドへと視線をやった。
けれど、誰の寝ている痕跡もなくて。
怖い、怖いよ。
本当にどこかへ行っちゃったの?
どうしよう。
私、なんか変だし。
なんでこんなに怖がっているのかすらも、…分からないよ。
――ガチャ。
静かな音とともに、微かな光が部屋に差し込んだ。
「…柊太? 」
期待を胸に小さく発する。
すると、扉をゆっくりと閉めながら、
その人物は寝ぼけた様子で言った。
「……起きてたのか」
――柊太だ……。
私は、ベッドをはい出ると、無我夢中で飛びついた。
自分でも分からない。
私、何してるんだろう。
朦朧とした意識のまま、必死にしがみつく。
「…どうした? ふぁあ…」
一瞬驚いた様子を見せたたものの、すぐにいつものような態度で言った。
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流華 - ネクロさん» 感想ありがとうございます!!久々にうらつくを開いたらコメントあって嬉しいです涙 (2021年6月27日 20時) (レス) id: c141522df8 (このIDを非表示/違反報告)
ネクロ - 今1を読み終わった所です!2が楽しみなので、早速読んできます! (2021年1月2日 20時) (レス) id: acc1702ca8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 x他1人 | 作成日時:2014年3月23日 22時