52 柊太と昇 〜柊太side〜 ページ2
さかのぼること11年。
俺が5歳のころ。
まだ小学生にもままならないほどに幼かった俺は、
昇、という同い年の友達と遊んでいた。
俺たち二人は、兄弟と言われるほどに仲が良く、
切っても切れない絆で結ばれていた。
そんなある日。
二人の関係を一変させる出来事が起きたんだ……――。
『なぁ、昇! 俺、これ買ってもらったんだ! 』
川をまたぐ小さな橋で、俺は自慢げに、
親に買ってもらったペンを見せた。
そんな俺に、昇はまるで自分のことのように目を輝かせながら、
そのペンを見つめていた。
『すっげー! キラッキラしてる! 』
『へへー、俺、気に入ってるんだ、このペン』
『へー、ねぇ、ちょっとだけ見せて〜! 』
『おうっ。もっちろん! 』
そして、何を思うことなく、俺は昇にペンを渡した。
『すっげー、大人っぽい、金色だ…あっ……』
その時、手からペンが滑り落ちて行った。
そして、ぽちゃんと小さな音を立てながら、水の中へと吸い込まれていった。
『…あぁっ…』
虚しく流れゆくペンを、俺は呆然と見つめていた。
どうすることもできなくて、今にも流れ落ちそうなほどに涙をためて。
――バシャーン。
水がはねたと同時に、我に返った。
そして、川の中へと視線をやると、そこには必死に泳ぐ昇の姿があった。
『柊太! ほらっ』
昇は、手元に俺のペンを握りしめていた。
…眩い笑顔で。
そんな昇に、今にも零れ落ちそうな涙をためたまま、俺は笑顔を返した。
――その時だった。
大きな倒木が流れてきて、昇はその木の枝に足をからませた。
そのまま、流れる川の水によって、昇は倒木とともに流されてしまった。
『昇! 今行……』
『駄目だ、危ない』
昇を助けようと、靴を脱ぎ、水に入ろうとした時、
偶然通りかかった見知らぬ男に止められた。
『どうして! 離して! このままじゃ、このままじゃ昇がながれちゃうよ……! 』
『駄目だ』
『離してよ、離してよぉ!! 』
大人である男に力が敵うはずもなく、
俺はただただ泣き崩れた。
どうして、何もさせてくれないんだよ。
…何も、できないんだよ…。
幼いながらも、俺は自分を憎んだ。
その後、昇は大人に救助され、そのまま病院へと連れて行かれた。
そして、入院した。
木が絡まってしまった右足は、切れ、その傷口に菌が入ってしまった。
そのため、やむを得ず、…失うこととなった。
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流華 - ネクロさん» 感想ありがとうございます!!久々にうらつくを開いたらコメントあって嬉しいです涙 (2021年6月27日 20時) (レス) id: c141522df8 (このIDを非表示/違反報告)
ネクロ - 今1を読み終わった所です!2が楽しみなので、早速読んできます! (2021年1月2日 20時) (レス) id: acc1702ca8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 x他1人 | 作成日時:2014年3月23日 22時