十三話.元安川を小舟が浮かぶ ページ15
『わー。うちゃ久しぶりに船に乗りました！思うたより心地ええのですね』
辰眞「ほうですか、そりゃ、
私達は貸ボート屋さんから小舟を借りて、元安川を漕ぎだした。
というのも漕いでいるのは、私の向かいに座っている辰眞さん。
辰眞さんは細いけれど力があって、ボートはすいすい進んでいく。
辰眞「水面に夕日が映っとって、輝いてです。綺麗じゃのう。」
辰眞さんは夕日を眩しそうに目を細めて見つめながら、そう話した。
『あの…場所、変わりましょうか？
そこは眩しいでしょうし。』
辰眞「なんの」
辰眞さんはそう言うと立ち上がり、
私の方へ歩み寄った。
小舟はぐらぐらと揺れる。
辰眞さんは自分の首に手をかけると、
マフラーを外した。
『あの、』
辰眞「寒かろう…わしのこれを巻いとってください。」
彼は不器用に私の首にマフラーを結びつけると、再び向かいに座り、舟を漕ぎ始める。
そんな彼の肩は震えていた。
『木崎さんこそ…震えとりますよ。
寒いんじゃ無いですか』
辰眞「え？あっ、」
辰眞「はは。こりゃ緊張しとるんです…こうやって二人だけになったら、なんだか…」
『ほうですか…』
辰眞「はあ…」
『…』
辰眞「…」
ああ。またまた無言の時間が始まった。
私達の会話。大分お互いに慣れてはきたけれど、やはりぎこちない。
話さないと。
それに、聞かないといけないこともある。
私…この人と、いつ会ったのかな。
話したこと、無いはずなのに。
どうしてこの人は、私が好きなのかしら。
辰眞「ほれ。Aさん。」
会話のないうちに、小舟は先ほどの陳列館の前に来た。
そして辰眞さんは漕ぐのをやめる。
広島県 産業奨励館。
目の前にするととても大きくて、
私は息を飲んでじっとそれを見つめていた。
そして。
『…辰眞さん』
辰眞「ん？」
陳列館から目をそらし、緊張していると言っていた彼に正面から向き合う。
『…緊張せんでええし、作らなくてええです。
無理せんで…今日はそのままの木崎さんを見せてつかあさい』
私がそう言うと、彼は一瞬ぽかんとしたものの、再び顔を引き締めた。
辰眞「…ええんですか」
『は…はい』
辰眞「…」
辰眞「…、…はぁ〜疲れた！」
『…え？』
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なー(プロフ) - 初めて読ませていただきました。心温まるお話、続きが気になります！ (12月14日 16時) (
レス) @page27 id: 5a5cf333fe (このIDを非表示/違反報告)
さとみ - はじめまして。楽しみに読ませてもらってます。完結したお話しでも再開するのでしょうか？またお話し読めるのを楽しみにしてます。 (2022年9月30日 14時) (レス) id: 1dc70ba9d0 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ(プロフ) - 最近すごく『この世界の片隅に』にハマっていたんですよ、、ストーリーもキャラクター同士の関係も最高です…更新楽しみにしていますね (2020年7月12日 23時) (レス) id: bc0dbb2048 (このIDを非表示/違反報告)
もえこ(プロフ) - お話が動き始めて本当に嬉しいです！ありがとうございます！これからも頑張ってください！ (2020年3月26日 17時) (レス) id: 8b605c37d7 (このIDを非表示/違反報告)
Reika(プロフ) - おかえりなさい^ ^作者さんのペースで更新頑張ってください！読みに行きますね。 (2020年3月15日 23時) (レス) id: 616ea4ec17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杏 | 作成日時：2018年7月22日 11時
