十四話.本當の貴方は ページ16
辰眞「はははっ…実はわしゃ、本当は敬語なんて使う柄じゃないんよ。Aさん。」
『は、はあ…』
先程まで、�狎鼎��瓩箸いΠ�象しかなかった彼。静かで優しい辰眞さん。
しかし今、目の前にいる彼は違うらしい。
私は何と返したらいいのか分からず、口を半開きにして彼を見つめることしか出来ない。
辰眞「失望しましたか。」
『い、いえ…うちゃてっきり冷静なお方かと思うとりました…』
『あ。ほいでもいきなり広島に行こうとか言い出した時は…ちいと破天荒じゃ思いましたけど。』
辰眞「ははっ、バレとりましたか。
ほうです。わしゃこんとな性格です。」
そう言って辰眞さんは私にニカッと笑う。
先ほどの控えめな微笑とは違う。
太陽みたいな笑顔。
『…安心しました。』
『明るい方で。だって静かな方じゃったら、これから来る戦争なんて、乗り越えられんもんね。』
私がそう言って笑い返すと、辰眞さんは嬉しそうに笑ってくれた。
辰眞「Aさん。ありがとう。」
こうやって笑いあっていたら、なんだかずっと昔から家族だったみたいに、心が落ち着いてきた。
でも違う。私は、聞かなきゃいけない。
『あの…ほいで緊張が溶けたようじゃし…辰眞さん。』
辰眞「？」
『うち、あんたと話したことがあってじゃろか。記憶力は悪うないはずじゃが、どうにも…』
私がそう訊ねると、辰眞さんは俯いて顔に影を落とした。
辰眞「…」
『あの…』
私、もしかして大切なことを忘れてるのだろうか？
幼い頃に、嫁になる約束なんかしてたりして…まさかね。
…私の唯一の心当たり。
これに賭けるしかない。
『…うちが泥沼に落ちた時、引き上げてくれさったんが木崎さんじゃろか』
私が訊ねると、彼は一瞬考えるように目を泳がせ、
突然吹き出した。
辰眞「…ひきあげ…あ！っははは、ありゃわしと違う。ありゃあ、同級の佐橋じゃ」
『え！ほうですか？』
辰眞「おう。どうしてわしと思ったんか？」
『いえ…引き上げてくれさったんが、その時知らん顔じゃった記憶があるけえ…』
『じゃあ、いつ、うちは辰眞さんと…』
申し訳なさげに彼を上目で見る。
というか、本当に申し訳ないと思っている。
彼を見ると、彼は笑っていた。
でも今度は大きくというより、
微笑というに近い。
そして彼はこう言った。
辰眞「ない。話したことなんて無いんよ」
『え…？』
辰眞「わしの…一目惚れじゃけえの。」
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なー(プロフ) - 初めて読ませていただきました。心温まるお話、続きが気になります！ (12月14日 16時) (
レス) @page27 id: 5a5cf333fe (このIDを非表示/違反報告)
さとみ - はじめまして。楽しみに読ませてもらってます。完結したお話しでも再開するのでしょうか？またお話し読めるのを楽しみにしてます。 (2022年9月30日 14時) (レス) id: 1dc70ba9d0 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ(プロフ) - 最近すごく『この世界の片隅に』にハマっていたんですよ、、ストーリーもキャラクター同士の関係も最高です…更新楽しみにしていますね (2020年7月12日 23時) (レス) id: bc0dbb2048 (このIDを非表示/違反報告)
もえこ(プロフ) - お話が動き始めて本当に嬉しいです！ありがとうございます！これからも頑張ってください！ (2020年3月26日 17時) (レス) id: 8b605c37d7 (このIDを非表示/違反報告)
Reika(プロフ) - おかえりなさい^ ^作者さんのペースで更新頑張ってください！読みに行きますね。 (2020年3月15日 23時) (レス) id: 616ea4ec17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杏 | 作成日時：2018年7月22日 11時
