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「振らなくていいの？」
「あ？･･ああ、大丈夫やろ。何かしっくりくるしな。」
「では次は‥お嬢さん。」
レイに首を傾げるハリーを見ているとふいに掛けられた声にハルは顔を上げた。
「君の杖は決まっておるよ…」
と顎を一撫でしてオリバンダーはまた杖棚に引っ込んでいった。
「？」
「決まってる？」
首を傾げるレイの横でハルも不思議そうにオリバンダーの帰りを待つ。
「おお！これじゃ‥！」
奥から一つの箱を持って嬉々と箱を開けたオリバンダーがその杖をハルに差し出した。
「…！」
掴んだその手が杖を離さない。
指先が触れた瞬間から誰かの記憶が流れてくる。
誰かの笑い声、泣いている声、怒っている声、苦しんでいる声
≪いつかきっとーー≫
握りしめる温もりがそっとリンクして伝わってくる。
≪また逢おう。ーー。≫
泣き笑うその顔が示したのは一体何か。いまの私には考えつくものなど何も無かった。
「サンザシにセストラルのたてがみ、27センチ。しなりが良く上質で軽い。繋に千年桜の結晶。変身術に適している。」
「！」
ハッとしてハルがその杖を振ると杖先から淡い光がぽつぽつと零れだし、それはまるでホタルの光のようにちかちかと光を発した。
「ブラボー！！」
「ほぉ…、綺麗なもんだなぁ。」
すかさず感嘆の声をあげたオリバンダーに続いてハグリットも溜息が零れる。
「綺麗だったね…」
「そうだな…。」
ハグリットと同じく溜息を吐くハリーにレイも頷いた。
「(サンザシにセストラルのたてがみ…。秩序や自由、尊厳‥嫉妬からの開放････。それに)」
桜は神が降り立つところ…
じっと杖を見るハルを一見してレイも顎に指先を添える。
「(ま…、妥当なところやな。)」
ハルはそっと杖を一撫ですると小さく微笑んだ。
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作者名：イト | 作成日時：2018年3月8日 23時
